残業が減ったのはいいけど……

働き方改革の目玉として、長時間労働の是正が進められています。

具体的には、

●原則的な残業上限は、月45時間、年360時間
●特別な事情がある場合に労使協定を結べば、
(1)年720時間(月平均60時間)以内
(2)単月では最大100時間未満
(3)2カ月から6カ月の月平均80時間以内
(4)月45時間を超えられるのは年6カ月以内

として、これらを罰則付きで法制化する見通しです。立場によって賛否はあるでしょうが、多くの企業は対応をせまられることになります。

そこで、法改定に応じて労働時間の短縮が進むとして、より現実的な問題を考えてみましょう。

企業にとっては「労働時間が減少した分、業績が下がるのは困る」、社員にとっては「残業代がなくなって、収入が減るのは困る」という問題です。

たとえば、あるメーカーの製造部門が、残業により生産対応していたとします。当然、残業時間を減らせば、生産量が減りますので、その分の売上が減少します。残業代が減る分、人件費コストは下がりますが、それ以上に業績が落ち込めば、企業は、賞与など残業代以外の人件費も抑えようとするでしょう。

すると、社員にとっては、残業代以上に年収が下がる結果となります。

また、小売業や外食産業の場合、パート・アルバイトを増やして対応したいところですが、人手不足でなかなか集まりません。そのため、もともとスタッフが10人必要な時間帯を、8人で回すことになるかもしれません。チャンスロスやクレームによる販売減にならなければいいのですが、収益への影響は避けられないでしょう。あるいは、営業時間を減らせば、残業時間の削減はできますが、その営業時間分は確実に売上が減少してしまいます。すると、先ほどのメーカーと同じように、社員の収入減につながります。

これでは、社員にとって、労働時間を減らそうとする意欲を削いでしまう。

この問題の解決策としては、残業が減ることで、会社も個人も得になるようにすることです。