【ステージI~III】歯石を取りきれなくなったら骨の溶けはじめ

人類史上、感染者数がもっとも多い感染症は歯周病――。2001年のギネスブックにそう認定されているほど、広く蔓延している病気です。軽度のものも含めると、日本人成人の多くの人が歯周病。メジャーな病気でありながら、専門医は少ない。歯周病が地道に治療をしていくものだからでしょう。

歯周病の初期段階が歯肉炎で、歯茎に炎症が起き、場合によっては腫れや出血といった症状を伴います。さらに進行すると歯周炎になり、歯を支える歯槽骨や、歯と歯槽骨をつなぐクッションのような役割をする歯根膜が破壊されます。同時に歯茎の腫れや出血も起きるためそちらに目が奪われがちですが、歯周病の本質は「歯を支える骨が溶ける病気」です。治療せずに放置すると、歯の根の先まで骨が溶けて歯が抜けてしまいます。

歯肉炎や歯周炎が起きるのはプラークが原因。歯と歯茎の間の溝にプラークが溜まると炎症を起こして歯肉炎になります。溝が深くなると少しずつ歯周炎が始まり、症状が出始めるのです。

プラークは放置すると、唾液や血液と反応して固まり歯石になります。固まった歯石自体は歯に特段の悪さをするわけではありませんが、生きたプラークが付着します。とくに歯周ポケットの奥深くに付着する歯石は、嫌気性を持つ歯周病菌の基地になります。歯周病の基本的な治療はこのプラーク、歯石を取り除くことにほかなりません。

口腔内にプラークがあっても、免疫力が高ければ歯周病菌と歯周組織の共生関係が保たれて歯周病は発症しません。40歳を過ぎて徐々に免疫機能が低下したり、喫煙や糖尿病といったリスクファクターで、共生関係が崩れて歯周病が発症・進行しやすくなります。

昔から同じようなやり方で歯磨きしているのに40代や50代になって急に歯周病が進行する人がいるのは、まさに加齢や生活習慣のせいです。加齢は避けられませんが、共生関係を保つためにプラークコントロールを強化したり、生活習慣を見直すことは可能です。いつまでも若いつもりで昔と同じ生活を続けているのは危険ですね。

では歯周病の治療法とは何なのでしょうか。すべてのベースにあるのは、自分で毎日プラークコントロールをすることです。どのような治療を行っても、歯磨きを怠ったり再度プラークがつけば意味がなくなってしまいます。

プラークや歯石をきれいに除去しても、口腔内から歯周病菌は完全にはいなくなりません。歯をすべて抜いて総入れ歯にしたり、インプラントにしたりしても歯周病菌は口の中に存在します。どんな歯科治療を行ったとしても、歯磨きは一生涯欠かしてはいけない予防であり治療なのです。歯周病治療が地道であるゆえんはここにあります。

歯周病は4つのステージに分けられ、主に骨吸収(骨が失われる)の度合いで重症度を診断します。治療法を見ていきましょう。

ステージI・IIは骨吸収が歯根3分の1未満、歯周ポケットで言うと3〜5ミリほどで、いずれも歯周炎による歯の喪失はなく軽度〜中等度。治療は歯磨き指導と歯垢・歯石除去(スケーリング)です。3カ月〜半年に一度、糖尿病などのリスクファクターがある人は1〜3カ月に一度は通院して治療を受けたほうがいいでしょう。これらの治療は保険診療内です。

(構成=村上 敬)