一般的に歯科治療の9割以上は虫歯、歯周病、義歯、予防的メンテナンスです。緊急性や特殊性がなければ、これらの治療はご自宅や勤務先の近くの歯科医院で十分に対応できます。日常的な症状であれば、まずは通いやすさを最優先にすべきです。いわゆる「ホームドクター」「かかりつけ医」ですね。
しかし、近さだけで選んでしまうと後悔することがあります。その医院が信頼に足るかどうかを判断できるポイントをお話しします。
①かかりつけ医は「年齢」で選べ
歯科医師の技術と経験、体力を総合的に考えると、実力のピークは一般的に50代前半だといわれています。厚労省の令和4年の統計では、歯科診療所に勤務する歯科医師の平均年齢は54.8歳で、ちょうど実力のある世代が中心を担っています。しかし、だからといって今まさにピークを迎えている歯科医師を選べばいいとは限りません。
大切なのは、歯科医師と自分の年齢差を考えることです。歯科開業医には法律上の定年がなく、70歳前後まで現役を続ける方が多い一方、体力や視力の衰えから60代後半で引退する方も少なくありません。たとえば患者さんが60歳のときに同世代の歯科医師をかかりつけにすると、10年以内にその先生がリタイアしてしまう可能性が十分にあるわけです。
高齢になるほど口腔内の状態は複雑になります。歯科の受療率は高齢層ほど高まる傾向にあり、まさに歯科医師を最も必要とする時期です。現在の所見だけでなく、長年の治療歴や生活習慣、患者さんの性格や要望まで理解してくれる歯科医師の存在は何ものにも代えがたい。新しいかかりつけ医との信頼関係をゼロから構築するのは容易ではなく、時間もかかります。以上を踏まえると、60歳以上の方は40代以下で院長を務める歯科医師をホームドクターにすることをお勧めします。逆に、お子さんの歯科医院を選ぶ場合は、長期の関係を前提にする必要がなく、技術・体力ともにピークを迎えている世代の歯科医師を選んで問題ありません。
②「紹介先の数」を確認せよ
ホームページや広告に「○○病院の○○科と連携しています」と紹介先の医療機関を明記している歯科医院は、信頼度が高いといえます。歯科医師の出身大学の付属病院や地域の基幹病院への紹介はどの医院でも可能ですが、注目すべきはそれ以外の紹介先をどれだけ持っているかです。
複数の紹介先を持ち、患者さんの症状や希望に応じて選択肢として提示できる医院は、それだけ外部の専門家とのネットワークが広い証拠です。自分の手に負えない症例を抱え込まず、インプラントなら○○先生、口腔外科なら○○病院と、最適な専門医に迅速につなげる判断ができる。「たらいまわしにされた」と感じる患者さんの声を聞くこともありますが、適切な紹介はむしろ患者さんを守るための医師の判断です。紹介先が多い、ということは、その歯科医師が広い視野を持ち、自院の治療の限界を正直に認められる誠実さの表れでもあるのです。さらに連携が強いと、自院に専門医を呼んで患者さんを診てもらうこともできます。
③「ラバーダム」の使用を聞いてみよう
最後に、治療に対する姿勢が端的に表れる指標を一つ紹介します。「ラバーダム」をご存じでしょうか。根管治療(歯の神経の治療)などで使用するゴムのシートで、治療する歯だけを露出させ、唾液や細菌を物理的に遮断する器具です。これを使うことで治療の成功率は飛躍的に高まります。
ところが、現状ではラバーダムの使用に保険点数がつきません。装着には手間と時間もかかるため、使えば使うほど医院の経営的には赤字になります。それにもかかわらず、ラバーダムの使用を徹底している医院が存在します。こうした医院は、目の前の利益よりも治療の質を優先しているといえます。
少し確認するだけで、その医院が大切にしていることがわかります。読者の皆さんが末永く信頼できるかかりつけ医に出会えることを願っています。
ここから先は有料会員限定です。
登録すると今すぐ全文と関連記事が読めます。
- 広告最小化で快適な閲覧
- 雑誌『プレジデント』が最新号から読み放題
- ビジネスに役立つ学びの動画が見放題
- 会員限定オンラインイベント



