スマホを使っていると、「脳を使っている」ように感じるが、これは大きな勘違いで、実は脳が働いていないのだという。さらに長時間スマホを使用すると、「脳は働くのをやめてしまう」。これはどういうことか。脳機能研究の第一人者である東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授に取材した――。

使用禁止にすべき医学的3大理由

最近、自分の書く原稿がつまらなくなってきていると感じていた。私は取材して原稿を書くことを主な仕事としているので、小説家と違い、業務に“創造性”はあまり関係がないと思っていた。だが同じように取材して同じように原稿を書いても、数年前に自分が書いたものと比べると、独自性が弱まり、ただのガイド文のように見えてくるのだ。おまけに仕事中の集中力低下にも悩んでいて、メールの返信やインターネットの検索に明け暮れ、少し前なら2時間で書けた3000字の原稿が、2日ほどかかってしまうこともあった。一日にこなせる仕事量が以前より明らかに落ちているのだ。

そんな折、大学生の娘がタイムロッキングコンテナ(自分が制限したいものを入れて時間を決めてロックする)を買ってきた。これからオンライン授業を受ける、レポートを書くなどの課題に取り組む場合以外は、これにスマートフォンやノートパソコンをしまって、触れないようにするためだと宣言する。

私から見ると、娘はスマホやパソコン漬けではないようだったが、本人は「自分でスマホやノートパソコンの使用を制御できていない」と言う。一年前に発売されたPRESIDENT誌の大特集「スマホが危ない」のうちの、<「スマホは子供をダメにする」使用禁止にすべき医学的3大理由>の記事を見せてくれた。「3つの大問題」として、1)学力の低下、2)脳の発達が止まる、3)依存症を引き起こす、が挙げられている。

同記事の著者である東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授の発信はよく目にしていた。スマホを利用する時間が長い子どもほど成績が下がるという事実(調査結果)を、今からおよそ15年前に発表した脳機能研究の第一人者である。それは同じ学習時間、同じ睡眠時間の子どもたちで比較した場合も、だ。改めてPERSIDENT誌の記事を読み、「3つの大問題」は大人にも当てはまるのではないかと、私は川島教授の著書『スマホ依存が脳を傷つける』(宝島社新書)を購入した。

東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授
筆者撮影
東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授