経営の神様と呼ばれる松下幸之助は、『日本書紀』にも登場する神さまを深く崇敬していた。ノンフィクションライターの本田不二雄さんは「経営者として孤独な決断を迫られる日々のなか、道を照らしてくれる神さまを精神的支柱にした」という――。
天と地の境界に現れた巨神
今回は、猿田彦神(『日本書紀』)とも猿田毘古神(『古事記』)とも表記される神さまに注目します。日本神話のなかで、天照大神の孫、瓊瓊杵尊が天上界(高天原)から地上に降臨する場面。いわゆる「天孫降臨」のシーンに登場する神さまです。
――まさに天降りしようというとき、「天之八衢」に、上は高天原を光し、下は葦原中国(地上世界)を光す神がいた。不審に思った大神らは、天鈿女命を遣わし、「こんなところにいるのは誰か」と聞いてこさせた。
その神はこう答えた。
「われは国つ神で、名は猿田彦神。ここにいるのは、天つ神の御子がお降りになると聞き、ご先導するためにここで出迎えていたのだ」(『古事記』意訳)
その神はこう答えた。
「われは国つ神で、名は猿田彦神。ここにいるのは、天つ神の御子がお降りになると聞き、ご先導するためにここで出迎えていたのだ」(『古事記』意訳)
注目すべきはそのルックスです。『日本書紀』には、鼻の長さは7咫(約1.2メートル)、背丈は7尋(約12.6メートル)あるといい、しかも、口元が光り輝き、目は八咫鏡のように大きく丸く、赤ホオズキのように照り輝いている――と書かれています。
ウルトラサイズの巨体で、かつ長大な鼻をもち、巨大な真っ赤な目をギラギラ光らせている……まさに怪物というよりほかない風貌です。そんな「神」が、天と地の境界エリアに出現したというのです。
ちなみに「国つ神」とは、地上世界の土着の神のことで、天界(高天原)由来の「天つ神」とは出自を異にします。瓊瓊杵尊一行にとっては、異界の恐るべき存在に映ったことでしょう。

