中国の国有航空大手3社が、2026年上半期に合計約82億元(約1890億円)の最終赤字を計上した。春節需要で第1四半期は黒字だったが、燃料費の急騰に加え、習近平政権の訪日自粛要請を受け、値上げが通りやすい高採算の日本路線を相次いで縮小したことが響いた。一方、1~7月の中国本土からの訪日客は56.3%減ったものの、訪日客全体は1.7%減にとどまり、7月は過去最多を記録した。日本に打撃を与えるはずの政策が、なぜ自国の航空会社を苦しめたのか。海外メディアの報道から読み解く――。
広州発CA1330便が中華人民共和国北京の北京首都国際空港に到着。2019年3月
広州発CA1330便が中華人民共和国北京の北京首都国際空港に到着。2019年3月(写真=Alan Wilson/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons

日本路線の切り捨てが赤字転落の決定打に

2026年の第1四半期(1〜3月期)、中国の「ビッグ3」と呼ばれる国有航空大手の収支合計は、黒字を確保していた。中国国際航空、中国東方航空、中国南方航空の3社だ。春節(旧正月)の旅行需要に支えられた。

ところが8月末に出そろった決算では、3社の上半期の最終損益は合計で約82億元(約1890億円)の赤字となった。ロイターによれば、上半期の赤字はこれで7年連続だ。春節需要に支えられた第1四半期の黒字から一転し、4〜6月のわずか3カ月で急激に悪化した。

通年でも赤字は避けられない。香港上海銀行(HSBC)のアナリストは3社合計で168億元(約3860億円)の最終赤字を見込む。市場が織り込んでいた13億元(約299億円)の黒字から、一気に不採算に沈んだ。

原因として、イラン戦争でコストが膨らんだことが大きい。アメリカとイスラエルが2月にイランへの攻撃に踏み切ると、燃料価格は跳ね上がった。米ビジネスニュース専門局のCNBCによると、指標となるシンガポール市場の航空燃料価格(プラッツ)は、2月下旬の1バレル93ドル(約1万4300円)から3月下旬には過去最高の242ドル(約3万7200円)へ、2.6倍に急騰した。

中国国有3社はこれまで、燃料価格のヘッジ(先物などで調達価格を固定する措置)をほとんどかけてこなかった。

そこへ決定打となったのが、運賃の引き上げを比較的受け入れやすい顧客層が揃う日本線を、政治的な理由から手放していたことだ。習近平政権が放った訪日自粛要請で、中国の国営航空会社の苦境は深刻化した。

約2万7000席を削られた路線も

きっかけは、ある答弁だった。

昨年11月7日、高市早苗首相が国会で、中国が台湾に武力侵攻すれば日本の存立が脅かされる事態になりうるとして、台湾有事に日本が介入する可能性に言及した。

自衛隊を動かす根拠になりうる答弁だと捉えた中国政府は、激しく反発。日本への渡航を控えるよう自国民に促し、中国の航空各社は日本路線を相次いで減便した。

日本路線といえば、中国の航空各社にとってドル箱だ。その生命線から各社が距離を置くようになるまで、1カ月もかからなかった。

米航空宇宙専門誌のアビエーション・ウィークは、英航空データ情報会社のOAGのデータをもとに、急激な減少ぶりを報じている。昨年12月の中国系航空会社の日本発着便は11月3日時点の計画数が185万席・9813便だったのに対し、12月1日には142万席・7432便まで減った。わずか1カ月で、座席数の23.2%、便数の24.3%が消えた計算になる。

日本と中国を結ぶ直行便は、長沙―関西、北京大興―新千歳、福州―名古屋など12の区間で姿を消した。当初12月に運航予定だった97路線のうち、実際に運航されたのは85路線にとどまり、減便を免れたのはわずか20路線だった。残った路線も、上海浦東―新千歳が約3万3000席(43%)減、南京―関西が約2万7000席(73%)減と座席数が削られた。