韓国で急増する中国人観光客

3社は、こうした値上げの通る数少ない市場から自ら撤退あるいは減便した。ブルームバーグが取り上げた航空データ企業シリウムの集計では、今年の春節連休に中国から日本へ運航予定の便は前年比48%減の800便強にとどまる。

中国の顧客層は価格に敏感だ。国内線は高速鉄道に価格で押され、運賃を上げれば客はたやすく鉄道を選んでしまう。

国際航空運送協会(IATA)の集計では、5月の中国の国内線旅客需要は前年同月比6.2%減と、すでに主要市場のなかで最も弱い。

一方、国際線はどうか。シリウム調べでは、今年の旧正月連休期間の中国―韓国便は前年比約25%増の1330便超に伸びるなど、日本に代わる近距離の渡航先として韓国が人気だ。

韓国のシンクタンク、ヤノルジャ・リサーチは、同国を訪れる中国人が今年700万人を超え、前年比15%増になると予測する。昨年10月には中国の習近平国家主席が11年ぶりに韓国を訪問し、相互のビザ免除も動き出した。

中国の習近平国家主席は2025年10月30日から11月1日まで韓国を訪問し、慶州でのAPEC首脳会議に出席した。訪韓は2014年以来11年ぶりだった
中国の習近平国家主席は2025年10月30日から11月1日まで韓国を訪問し、慶州でのAPEC首脳会議に出席した。訪韓は2014年以来11年ぶりだった(写真=首相官邸/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

チャイナ・トレーディング・デスクは、今年の旧正月連休の1週間で、中国人の韓国での消費額が3億3000万ドル(約507億円)を超えると予測する。日本での2億5000万〜3億ドル(約384億〜461億円)を上回る水準だ。

ただし、客を呼び込んでいるのはウォン安の割安感であり、したがって利用者は航空券自体の値上げに敏感だ。

収益改善の機会を自ら手放した

フランスの投資銀行ナティクシスでアジア太平洋を担当するシニアエコノミスト、ゲイリー・ン氏は香港英字紙のサウスチャイナ・モーニングポストに、「中国の消費者はコロナ危機以降、いっそう価格に敏感になっている。国内のインフレ率が世界の水準よりはるかに低いことも大きい」と語る。

旅行分析・マーケティング会社チャイナ・トレーディング・デスクのスブラマニア・バット氏も、通貨の割安さが「価格に敏感な層の買い物や美容、医療目的の旅行を後押ししている」とし、ビザ緩和やK-カルチャーの吸引力に加えて、韓国の伸びの一定部分を説明すると分析する。

手軽な韓国行きチケットが売れる反面、値上げの余地が大きかった日本路線から離れたことで、収益の改善は難しくなった。

現状、座席あたりの単価は厳しい。ロイターによれば、7月1〜14日のエコノミークラスの平均運賃は831元(約1万9100円)で、前年同期を1.2%下回り、コロナ前の2019年比では6.1%下回った。燃料費が7月時点でもイラン情勢前と比べ約5割高い水準にとどまるなか、運賃本体はむしろ下がっている。

さらに、リスクヘッジを行わなかったことで、不振は大きくなった。

3社のうち2025年に燃料高騰を睨んだヘッジをかけていたのは東方航空だけで、範囲も限定的だった。3月31日締めの前会計年度下半期に2億1800万シンガポールドル(約264億円)のヘッジ益を計上したシンガポール航空とは対照的だ。