老化の最大の要因は「酸化」と「糖化」
今号では日本人約1万人を対象とした大規模調査からわかった「老ける習慣」「老けない習慣」を取り上げる。
この調査を行った山岸昌一医師(昭和医科大学医学部教授)は、およそ40年も前から、老化の悪玉物質である「AGE」(終末糖化産物)に着目して研究を続け、数百もの論文を世に発表してきた。数々の学会賞を受賞し、著書も多数あり、権威ある医師なのだが、全く偉ぶらない。親しみやすく、それでいて「根拠」となる部分を丁寧に説明してくれる。私がたくさんの取材先の中でもとりわけ信頼を置く医師だ。
山岸医師は、高校生のときに難病の血液の病気を患っていたという。治療と看護の末に回復したが、「このときに医師になることを決意し、全身に影響する内科疾患を扱いたいと思いました」と述べる。
「呼吸器や循環器では診る臓器が限定してしまうでしょう。一方で高血糖やホルモンは、全身に影響がおよび、糖尿病を発症させます。だから糖尿病を専門に診る医師になりました」
40年前は糖尿病患者数が現代よりもぐっと少なく、病態も広く知られていなかったという。
「当時、糖尿病になると三大合併症(糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症)を引き起こすことは医学の教科書に記載されていましたが、それ以外の合併症に関してはほとんど触れられていませんでした。ですが診療を行っていると、糖尿病患者さんで病歴が長い方はがんや認知症になったり、また家で転倒すると骨折してしまい、寝たきりになってしまう人が非常に多かったのです。なぜだろうと疑問に思い、何か糖尿病全体で老年症候群(加齢に伴い高齢者に多くみられる医療を必要とする疾患の総称)を引き起こす因子(原因)があるのではないかと考えました。それがAGEの研究に取り組むきっかけです」
山岸医師が研究に取り組み始めたのが1989年。さまざまな文献を調べていくと、84年に医学論文上にAGEという言葉が登場していた。山岸医師は病気や老化を引き起こす因子がAGEではないかとの仮説を立て、細胞にAGEを投与すると、実際に機能障害が起こることもわかった。以来、AGEの研究を続けているという。
今では糖尿病患者だけでなく、人の老化現象にもAGEが大きく影響することが判明した。
「老化の最大の要因は、体内に取り込んだ酸素の一部が活性酸素に変わる『酸化』と『糖化』です」と、山岸医師が説明する。
「糖化とは、体内で過剰になったブドウ糖が体の重要な構成因子であるタンパク質にくっつき、その結果、タンパク質が劣化してしまうこと。たとえていうなら、体が砂糖漬けでベタベタになってしまうような現象をいいます。このとき体内で老化を促進する悪玉物質ができ、それがAGEと呼ばれるのです」
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