債務の返済期間が40年→80年に…利息負担を大幅減か
インドネシアのジャカルタ―バンドン高速鉄道「Whoosh(ウーシュ)」の中国向け債務の返済期間が、従来の40年から80年に再編された。ウーシュは需要予測を大きく下回る赤字運行が続いている。そのうえ、中国向けの債務の返済が重くのしかかっていただけに、インドネシア政府にとっては朗報だ。ただ、その条件は「元本を返すだけでいい」と言っても良いほど好条件で、中国政府は別の見返りを求めたとみられる。
(参考:ANTARA「Purbaya sebut cicilan utang Whoosh berkisar Rp1 triliun per tahun」)
「80年支払いが終わるころには、我々はもう死んでるから、安心したらいい」――。
インドネシアのプルバヤ前財務相(9月14日に突如更迭)は9月8日、ウーシュに関連する債務の返済期間が80年に延長されたことについて、報道陣にこう安堵の感想を漏らした。
(detikFinance「Purbaya Buka-bukaan Utang Whoosh: Cicilan Rp 1 T, Tenor 80 Tahun」)
プルバヤ氏の説明によると、年間返済額は約1兆ルピアか、それをやや下回るという。これがなぜ好条件なのか、説明しよう。
ウーシュを建設する際、中国開発銀行(CDB)が融資した元本は、建設費の増大に伴う追加分を含めて合計45億ドル相当。本来はここに年2~3%台の利息が上乗せされる。
(Bisnis Indonesia「Utang MRT Jakarta vs Kereta Cepat WHOOSH, Jepang Beri Bunga Rendah!」)
仮に返済総額がプルバヤ氏が言う「1兆ルピア×80年」とすると約80兆ルピアとなり、現在の為替レートで、CDBが融資した合計45億ドル相当とほぼ一致する。つまり、期間を通常の2倍に延ばす代わりに、実際は元本を返すだけで済むようになっている可能性が極めて高い。利息負担が大幅に軽減された、ありえない好条件とも言える。
国鉄の財務を圧迫する「走る時限爆弾」
インドネシア政府が中国側と債務返済を急いだ背景には、赤字負担の集中がある。ウーシュを運営する合弁会社、中国・インドネシア高速鉄道(KCIC)の株式6割を持つのが国営企業連合(PSBI)だ。その主要株主となっているのがインドネシア国鉄(KAI)である。ウーシュは「走る時限爆弾」(KAI総裁)と言われるほど、KAIの収支を圧迫していた。
これは当初のいきさつに起因する。ウーシュ建設をめぐって、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)前大統領が15年、それまでほぼ決まっていた日本の「政府保証を求める円借款方式」の案を退け、突如中国の「政府保証も国家予算からの拠出も求めない民間投資方式」を採用したためだ。
ただ、需要予測に反してウーシュは赤字を垂れ流し続け、本業が堅調なKAIの負担となっていた。現に、PSBIの最終赤字は、開業した2023年が9740億ルピア、24年が4兆1950億ルピア、25年が4兆9900億ルピアと年々拡大している。最新の26年上期も5兆1300億ルピアと前年通期をすでに上回る赤字を垂れ流している。
(Bisnis Indonesia「Laba KAI Anjlok Meski Pendapatan Naik Semester I/2026, Mengapa?」)
このようなウーシュの業績不振の打開策として、ジャワ島東端のスラバヤまで延伸することがこれまで唱えられてきた。だが、ジャカルタ―バンドン間の3倍以上の距離があり、総工費も膨らむため、「中国は今回で懲りて、やる気はない」(インドネシア政府関係者)との見方がほとんどだ。


