「三食ともにした」のに、振り回された小泉進次郎氏

この動きに対し、中国外務省も4月17日、東南アジア諸国連合(ASEAN)憲章や東南アジア友好協力条約に言及し、防衛協力は第三国を標的としたり、地域の平和と安定を損なったりすべきではないと不快感を表明した。

また、5月にはインドネシアで活動する中国系企業からなる民間経済団体「インドネシア中国商会総会」がプラボウォ大統領宛に投資環境の改善を直接求める書簡を出すなど4、5月にかけて中国とインドネシアの関係には緊張が高まった。

日本の小泉進次郎防衛相もシャフリィ国防相との関係構築を積極的に進めてきた。昨年11月の会談に続き、4月16日には成田空港でも会談し、5月3~4日にはインドネシアを訪問した。バリでは夕食をともにし、翌日には朝食、会談、昼食まで長時間を過ごした。小泉氏自身、「三食をともにした外国の閣僚は初めてだと思う」と語るほど個人的な信頼関係を築いたと好感を抱いていた。

成果も小さくない。両国は新たな「日インドネシア防衛協力取り決め」に署名し、共同訓練、防衛装備・技術協力を拡大するほか、作戦協力を見据えた機密軍事情報の保護についても協議を進めることで一致した。

米国も8月11日には米国防総省のエルブリッジ・コルビー政策担当次官がジャカルタを訪問。プラボウォ大統領やシャフリィ国防相と会談し、共同訓練、防衛産業、人材育成、相互運用性の強化を進める方向で一致していた。

中国と急接近、ミサイル・ロケットの共同生産まで

ところが、そのわずか10日後の8月21日には、今度は中国の外相と国防相がそろってジャカルタ入りし、ミサイルやロケットの共同生産まで含む協力を協議した。これは日米にとっては「ビジネスの世界ならいざ知らず、安全保障の世界では機密保持の問題もあり、相乗りはあり得ない」(日本の防衛省関係者)という不信感を抱かせるには十分だ。

9月17日には、シャフリィ国防相は北京で中国軍最高指導機関、中央軍事委員会の張升民副主席と会談した。8月の2+2の方針を確認し、装備、共同訓練、技術移転、戦略情報交換の4分野で作業部会を設け、軍事協力を実務レベルへ深化させることを決めている。

(Kementerian Pertahanan Republik Indonesia「Menhan RI Lakukan Pertemuan Bilateral dengan Vice Chairman CMC Tiongkok: Tegaskan Komitmen Kemitraan Strategis dan Bebas Aktif」)

米国と中国の覇権争いが続く中で、インドネシアの地政学的な価値は増している。世界最大級の群島国家としてインド洋と太平洋の間に位置し、マラッカ海峡に隣接するほか、スンダ海峡、ロンボク海峡など重要な海上交通路を抱える。さらに、南シナ海にも面している。人口、経済規模ともに東南アジア最大で、この国が米中いずれに傾くかは地域全体の勢力均衡を左右する。