インドネシアはすべてを天秤に…日本が引くべき線
日本の機密情報や核心技術に中国への流出リスクが生じるのであれば、協力範囲に線を引く。インドネシアが日本との関係を対中交渉のカードとして利用するなら、日本側も供与する技術、資金、情報に明確な条件を付ける。「友好国だから」という理由だけでリスクを取る必要はない。
特にAIと安全保障では、高速鉄道と同じ発想は通用しない。鉄道なら日本と中国のどちらを選んでも列車は走る。しかし、AI、通信、衛星、ミサイル、防空システム、軍事情報は互いにつながる。中国製システムの深部にアクセスできる国に、米国や日本が最高機密の情報や最先端技術をどこまで渡せるのか。インドネシアが米中双方から最高レベルの技術を同時に取り続けることには、いずれ限界が来る。
今回のウーシュの80年返済は、単なる鉄道会社の借金問題として見るべきではない。中国が数十億ドル規模の債権から得られる金融利益の一部を犠牲にしてでも、東南アジア最大の国との防衛、AI、鉄道、衛星協力を確保しようとしているのであれば、北京は非常に長い時間軸でインドネシアを見ていることになる。
一方のインドネシアは、中国、日本、米国のすべてを天秤に載せ、できるだけ多くの利益を引き出そうとしている。
求められる「サバサバした実利外交」
問題は、このインドネシアの外交姿勢がいつまで成立するかだ。経済協力の段階なら大国を競わせる余地は大きい。しかし安全保障とAIの領域では、どこかで選択を迫られる可能性がある。「実際、米中から約束と違うという話で、これから次々に別の条件を出させられ、搾り取られることが懸念される」(インドネシアの外務省関係者)。
日本に必要なのは、インドネシア外交を友情や好悪ではなく国益で理解することだ。そのうえで自国の国益を基準として、協力するところと距離を置くところを冷静に切り分ける。インドネシアに振り回されないためには、日本側もまた、決して自分たちと同じ考え方を前提とせずに、「サバサバした実利外交」を身につける必要がある。
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