ジブチ・ラオス・スリランカでも“拡張”が見える
アフリカのジブチでは、中国輸出入銀行は、エチオピア―ジブチ鉄道のジブチ区間に約4億9200万ドルを融資した。採算悪化後、中国側は返済期間を15年から25年へ延長し、据え置き期間も5年から10年へ拡大。金利上乗せ幅も引き下げ、その後は返済猶予にも応じた。一方、中国は港湾や自由貿易区への投資を広げ、2017年には同国に中国初の海外軍事基地を開設した。交通・物流から金融、安全保障へ関係が重層化した。
東南アジアのラオスでは、中国―ラオス鉄道は総事業費約59億ドルの大型案件で、中国向け債務の大規模な返済繰り延べを受ける。一方、中国国有企業が国家送電網会社の90%を取得するバーターと見られる動きも出ている。
(AIDDATA「China Eximbank provides $480 million loan for China-Laos Railway Project」)
(AIDDATA「China Eximbank provides $321 million government concessional loan for Banha-Sekong Power Transmission Project」)
スリランカでは、中国がハンバントタ港を約11億ドルで長期運営権を取得。その後は中国国有石油大手が同港周辺で約37億ドル規模の製油所計画を進めており、港湾を足場にエネルギー分野へ投資を広げている。
(AIDDATA「CDB provides $500 million loan to CMPort Holdings to facilitate acquisition of 85% ownership stake in Hambantota International Port Group (HIPG)」)
(Reuters「Sri Lanka agrees with China's Sinopec to fast-track $3.7 billion refinery」)
これらの4つの例に共通するのは、大型交通インフラへの関与が一件で完結せず、金融、通信、エネルギー、安全保障など別の戦略分野へ拡張していることだ。インドネシアも高速鉄道、ニッケル鉱山などを足がかりにパキスタンのようにAIやデジタル分野に中国の手が伸びていく可能性は高い。
インドネシア財界筋“AIの陣地取りが始まった”
インドネシア財界筋は「すでに大幅な赤字を覚悟しなければならない大型インフラの輸出の時代は終わったと考えていい。今は、米中対立でAIをどちらかの国のサービスで染め上げる『陣地取り』がホットトピック。あと1年もすれば一つの国に一つの国のサービスしか使えなくなるということも実際に起こりうる。インドネシアはそこで選択を迫られる」と予見する。
別のインドネシアの企業経営者は「今、重要なのはAIによる答えとなる文脈(コンテキスト)。例えば台湾海峡を巡る問題などで中国に都合のいい言説が出るようになると、世論をコントロールしやすくなる。中国はこれを狙っている」と分析する。
日本が考えるべきなのは、インドネシアの「全方位外交=その場での利害を最も重要視する八方美人外交」に腹を立てることでも、逆に「親日国」という物語に安心することでもない。もっとドライになることだ。
これは2015年の高速鉄道が残した最大の教訓でもある。日本が3年近くかけて事業化調査を行っても、最後は当時のジョコウィ政権にとってより良い条件を提示した中国へ案件は渡った。今回も、小泉進次郎防衛相がいくらシャフリィ国防相と個人的な関係を築けたとしても、それはそれと考えるべきだろう。
