健康に生きるうえで、睡眠は欠かすことはできない。ではどのくらい睡眠時間を確保すれば良いのか。サイエンスライターの佐藤健太郎さんの著書『人に話したくなる数字と科学の話』(文春新書)より、睡眠と寿命に関する話を紹介する――。
手塚治虫、水木しげる
手塚治虫(写真=Mutaito890/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)、水木しげる(写真=AFP/時事通信フォト​)

多忙でも10時間睡眠を守った水木しげる

現代人――中でも漫画家など締切に追われる職業の人は、どうしても睡眠が不足しがちだ。

しかし2015年に亡くなった水木しげるは、どんなに忙しくとも必ず1日10時間は眠っていたという。氏がこのことを手塚治虫と石ノ森章太郎に話したところ、そりゃ羨ましい、自分たちは2日も3日も徹夜だ、とバカにしたように返されたそうだ。

佐藤健太郎『人に話したくなる数字と科学の話』(文春新書)
佐藤健太郎『人に話したくなる数字と科学の話』(文春新書)

だが結果として、手塚・石ノ森はいずれも60歳で早逝し、水木は93歳の天寿を全うした。

「忙しくてろくに寝ていない」と、なぜか自慢げに言う人は多いが、睡眠時間と共に実は自分の寿命をも削っていることを胸に刻むべきだろう。

しかし、動物が睡眠を必要とするのは実に不思議なことだ。活動可能な時間は大いに減るし、寝込みを敵に襲われるリスクも大きい。にもかかわらず、眠らない動物は進化の歴史を勝ち抜けなかった。イルカなどには脳が半分ずつ交互に眠るものがいるし、空を飛びながら眠る渡り鳥さえも存在する。

脳の老廃物は睡眠によって流れる

こうまでして睡眠が必要な理由は、いろいろいわれている。もちろん脳の休息時間でもあるし、起きている間に得た情報を整理し、脳内に定着させてゆく時間でもある。動物が生き抜くためには、こうした作用が不可欠なのだ。そして最近、睡眠の新たな効能が発見された。

どうやら睡眠は、脳内の清掃時間でもあるらしいのだ。眠っている間に一部の脳細胞が縮んで隙間ができ、ここから老廃物が流れ出してゆくのだという。睡眠不足はアルツハイマー型認知症のリスクを高めることが報告されていたが、脳内に老廃物が蓄積するせいと考えれば辻褄は合う。

どうも恐ろしい話だ。では、どのくらい眠ればよいのだろうか。

「認知症」と日本語で書かれたニュースの見出し
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