相手が知りたいことを頭の中で想像する
報告や提案などをしているときに「結局、何が言いたいの?」「結論から話せ」と言われた経験がある人も多いでしょう。話がうまい人が持っているのは才能ではなく、誰でも身につけられる「順番」と「型」です。つい、ダラダラと話してしまいがちな長い話を1分で伝えるための方法を紹介します。ポイントは6つあります。
モチベーション&コミュニケーション代表取締役。日本能力開発推進協会メンタル心理カウンセラー・上級心理カウンセラー、日本声診断協会音声心理士。著書に、『「30秒で伝える」全技術「端的に話す」を完璧にマスターする会話の思考法』など。
話を短くするために、最初にやることは、「相手が何を聞きたいか」を想像することです。たとえば上司から「あのプロジェクトの件、どうなってる?」と聞かれたとします。上司が知りたいのは、納期どおりかどうかかもしれませんし、予算が足りているかどうか、目標達成に問題がないかどうかかもしれません。相手によって、聞きたいことは違います。判断できなければ、聞き返してください。「納期のことでしょうか」と確認すれば済みます。資料作りでも同じです。「これはどなたが見る資料ですか。社長ですか、課長ですか」と確認すれば、伝え方は自然に変わります。パワーポイントの1ページ目に「相手が知りたいことは何か」と入れておく、付箋に書いて目に入る場所に貼っておく、といったアナログな方法も有効です。
想像にかかる時間は2〜3秒で十分です。最初はうまくいかないかもしれませんが、慣れてくると「そう考えないと気持ち悪い」と感じる頭になっていきます。まずは相手の顔を思い浮かべるところから始めてみてください。報告でも相談でもメールでも、「これは誰が読むのか」と顔を思い浮かべてから手を動かす。これが習慣になれば、1分で伝えるための基本をマスターしたも同然です。「相手を思いやること」が、コミュニケーションの王道だと私は考えています。
次に大切なのが、相手が聞ける適切な量、つまりボリュームです。たとえばCMは長くても30秒程度、信号機の待ち時間や電車の扉の開閉時間も平均すると30秒程度のようです。恐らく、30秒以上になると長くて待てなくなるのではないかと思います。話す側は「1分なんて短い」と思いがちですが、聞く側にとって1分は意外と長いのです。しかも、ビジネスの場で聞く話は、嫌な報告や嫌なお願いのことが多いものです。だからこそ、短いほうが喜ばれます。目安は次のとおりです。10秒は約50文字、30秒は約150文字、1分は約300文字です。とはいえ、文字数を数えながら話す人はいません。「話す内容」でイメージしてください。
10秒なら、結論と根拠が1つずつです。「私はサウナが好きです。なぜなら、リフレッシュできるからです」。これで約10秒です。30秒ならこの根拠を3つ挙げられ、1分なら3つの根拠それぞれに事実を加えられます(下図)。この感覚が頭に入っていれば、話が散らばらず、自然と収まります。最初は原稿を書いて練習してもいいですし、慣れたら頭の中でイメージするだけでも練習になります。
「型」を利用して当てはめて話す
ボリュームがつかめたら、次は話す順番です。私たちはこれを「型」と呼んでいます。型とは、先に枠を作って中身を埋めていく話し方の総称です。代表的なものを2つご紹介します。
1つ目はSDS法です。サマリー(結論)、ディテール(詳細)、サマリー(まとめ)の順に話します。「今月の売上目標の達成率は90%の見立て(結論)です。新規件数が目標10件のところ5件だったことが原因です(詳細)。残り月末までに10社にアポイントを取り、新規獲得につなげていきます(まとめ)」という具合です。報告など、日常の8割はこの型で対応できます。初対面で相手の関心を引きたいときは、SDSの前に「A」アテンション(注意喚起)を加えてASDSとします。「40代以降の男性が癌になる確率をご存じですか?(アテンション)」と問いかけてから、結論に入る型です。
2つ目は「総論・各論・具体論」の型です。本にたとえると、総論がタイトル、各論が目次、具体論が各ページの中身にあたります。「今日は残業ゼロについて決めたいと思います(総論)。話し合うことは3つあります(各論)。それぞれこの後に詳しくお伝えします(具体論)」と会議の冒頭で示す、あるいは「本日は○○を提案させていただきます(総論)。お使いいただくメリットが3つあります(各論)。詳しくは……(具体論)」と切り出す、といった場面で有効です。これはちょうど1分で話せる型でもあります。ほかにも型はありますが、まずは2つで十分です。
型が大切なのは、「人は空白があると埋めたくなる」からです。「金、銀」と聞くと、つい「銅」と言いたくなりますよね。結論から話を始めようとしても言葉に詰まるものです。まず「結論・詳細・まとめ」という空白の箱を頭の中に作り、それから埋めることから始めましょう。悪い報告をしなければならないときには、結論から言いにくいものですが、結論が後回しになるとそれまでの言葉が言い訳に聞こえて、かえって印象が悪くなります。
中身を伝えるときは、具体的であることが大切です。「なるべく早く」ではなく「明日の13時までに」、「できるだけ頑張ります」ではなく「10個作ります」と言います。「月末まで」や「今週中」という言い方もよくありません。月末が30日の月もあれば、31日の月もありますし、「今週中」は人によって金曜日にも土曜日にも日曜日にもなるからです。必ず曜日や日付を指定します。「意識高く」「注力して」「当事者意識を持って」なども、何をどうしてほしいのか、第三者が聞いても意味がわかるようにすること、それが「具体的」の基準です。
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