なぜ熱心に説明するほど、商談は決まらないのか。年間2万人以上に講演するプレゼンの伝道師・西脇資哲さんは「プレゼンは、相手に話させたら勝ちだ」という――。

二流は「自分が話す」一流は「問いかける」

プレゼンテーションで大事なことは何でしょうか。おそらく多くの人が、「資料がわかりやすいこと」「聞き取りやすい声で、はっきりしゃべること」などを挙げるのではないでしょうか。

西脇資哲さん
西脇資哲 Motoaki Nishiwaki
日本マイクロソフト業務執行役員・トップエバンジェリスト。1996年日本オラクル入社、2009年日本マイクロソフトへ移籍。著書に『エバンジェリストの仕事術』『プレゼンは「目線」で決まる』など。

もちろん、それも大事なことです。しかし少人数を相手にする営業プレゼンの場合、最も力を入れるべきポイントはそこではありません。正解は、徹頭徹尾、相手を主役にして、できるだけたくさん話をしてもらうことです。

営業プレゼンでは、相手の反応がよくわかります。反応によって話を変えたり、相手のニーズをその場でくみ取ったりすることができる。この利点を生かさない手はありません。

しかし人間はいざプレゼンを始めると、自分がうまく話すことばかり考えてしまい、見る人、聞く人を置き去りにしがちです。そのため気がつけば一人で30分もしゃべり続けてしまったりする。その結果、「いやー、勉強になりました」と言われて結局、商談不成立ということが起こるのです。

本当はお客さまだって、質問も反論もしたいのです。考えてみてください。業務が忙しいなか、わざわざ時間を割いて座ってくださっている。ただ説明を聞いて終わりなら、資料をメールで送ってもらえば済む話です。聞きたいことを聞き、社内で報告できる材料を持ち帰りたい。質問や反論をするほうが、お客さまにとっても得なのです。

よく「最後に『何かご質問は?』と聞いても、誰も何も言ってくれない」という話を聞きます。あれは関心を持たれなかったからではありません。30分も黙って聞かされた人は、すでに聞き手になりきっています。そこから急に話し手に切り替われというほうが、無理な注文なのです。勝負は、最初に相手が口を開くかどうかで決まります。

では、どうすればいいのでしょうか。それは、アイスブレイクからお客さまにたくさん話してもらうことです。ここで多くの言葉を引き出しておくと、先方はその勢いに乗って、プレゼンの最中もたくさん質問をしたり、意見を言ったりしてくれます。

それには話題の振り方をひと工夫することです。「どうですか、最近」ではなく、「先月発表された新製品、拝見しましたよ。開発にはどのくらいかけられたんですか」というような、具体的な聞き方をしましょう。

私はプレゼンの前は、先方の会社についてとことん調べます。株価やニュースはもちろん、公式SNSのアカウントが発した内容もチェックします。移動中にスマホでも調べられます。

担当者についても、公開されている範囲で調べます。業界誌に出ていないか。セミナーで登壇していないか。本人が自ら話していることなら、こちらから触れても失礼にはなりません。

(構成=長山清子 撮影=宇佐美雅浩)