※本稿は、歌島大輔『肩のけんばん断裂 自力でできるリセット法』(アスコム)の一部を再編集したものです。
60代以上の筋トレは要注意
近年は「いくつになっても筋肉は鍛えられる」と言われ、筋トレに励む方が少なくありません。
ですが、60代以上の筋トレには注意が必要です。もちろん、私は筋トレ自体を否定しません。筋肉を鍛えることは、何歳になってもおすすめしたいことではあります。ですが、肩関節によくない筋トレもあるのです。
ここでインナーマッスルについて少し解説しておきましょう。インナーマッスルとは、日本語では「深層筋」と言い、体の深いところにある筋肉を指します。
インナーマッスルは関節のすぐ近くにあるので、その関節の安定性を高めることができます。肩の奥にある筋肉も、肩関節の近くにあるインナーマッスルです。
インナーマッスルと対になる概念が、アウターマッスルです。体の表面に近い筋肉で、日本語では「表層筋」と呼ばれています。アウターマッスルはインナーマッスルよりも大きくて太いので、強い力を発揮します。
アウターマッスルを鍛えると、力が強くなります。ですが、アウターマッスルは関節から遠いところにあるため、アウターマッスルの動きが関節には乱暴になってしまうことがあります。それが肩関節の痛みの要因になるのです。
「肩を使う筋トレ」は全般控えて
特に、ベンチプレスやショルダープレスなどの、上半身を鍛える筋トレには要注意です。特にショルダープレスで下ろすときの動きや、バーベルを担いでいる肩の姿勢は、肩関節の前方に負荷がかかり、よくない姿勢だというデータが出ています。このように、腕を外側に開いて、さらに外旋させる動きは「ハイファイブ」と呼ばれます。この動きは、肩の関節が前側にずれないように支える「前方関節包」というところに負荷をかけます。
それ以外にも重い負荷をかけて肩を使う筋トレは、全般的に控えるほうがいいでしょう。何度もお伝えしているように、肩は体の中でも特に損傷しやすい部位で、障害の発生率がとても高いのです(*1)(*2)。
私が診察していても、ベンチプレスが原因で肩を損傷する方は本当に多いのです。
ここで「けんばん断裂」について触れておきましょう。腱板とは、肩を安定させる4つのスジのことです。この腱板が、加齢に伴って徐々に弱ってきて、傷んで切れるのがけんばん断裂です。とくに60歳を超えたら注意が必要です(参考:第1回記事)。
けんばん断裂の中でも肩甲下筋腱の断裂や、「肩鎖関節炎」と呼ばれる障害は、ベンチプレスでたびたび起きています。

