肩より上で押す・引くは×、下半身と体幹を鍛えて

ベンチプレスをするとき、肩は筋肉でバーを上げ下げしながら、同時にバーを安定させる仕事もやらされます(*2)。これこそが「肩がしんどい」理由です。

肩を安定させるために、肩の周囲の筋肉は働き続けるのですが、腱板が弱っている人には、この安定化の作業がかなりの負担になります。

もし、どうしてもベンチプレスをしたければ、バーベルを持つ「グリップの幅を狭く」して、肩甲骨を大きく動かしてください。ハイファイブの姿勢が肩に負荷がかかるとお伝えしましたが、ベンチプレスのグリップ幅を広くして、肩甲骨をあまり動かさずに肩関節だけで大きく上げ下ろしをすると、ハイファイブを悪い意味で強化した姿勢になってしまいます。

中高年の女性のための筋トレ施設も増えていますが、50~80代の女性で「痛みがある」「特に夜間の痛みがひどい」「腕が上がらない」のどれかがあるなら、肩よりも上に腕を上げて押したり引いたりするメニュー(チェストバック、ベンチプレス、ショルダープレス、ペックデックなど)は避けて、下半身と体幹の筋トレを中心にすることをおすすめします。

大胸筋や三角筋を鍛えるほど肩に負担

肩関節によくないのは、肩を動かすアウターマッスル(主に大胸筋と三角筋)を鍛える筋トレです。大胸筋や三角筋の筋トレを頑張ってやってしまうと、肩を直線的に動かすことになります。腕は本来、肩甲骨と上腕骨が連動して、なめらかに動くものです。

ところが、このようなトレーニングを繰り返すと、機械的に一直線に動かすような形になってしまうのです。細やかな動きをするはずの肩を、大きな筋肉で押し切ってしまうようなものです。そのような動きが、肩への大きな負担になります。

歌島大輔『肩のけんばん断裂 自力でできるリセット法』(アスコム)
歌島大輔『肩のけんばん断裂 自力でできるリセット法』(アスコム)

特に、大胸筋を鍛えるトレーニングでは、肩が前のほうに引っ張られやすくなります。

また、三角筋を鍛えるトレーニングでは、少し極端な言い方になってしまいますが、上腕骨頭が受け皿である関節窩から上にずれようとする力がかかります。

実際に外れることはほぼないのですが、そういう無理な力がかかってしまうということです。

三角筋が働くときには、上腕骨頭が上に持ち上がらないように、腱板が上腕骨頭を肩関節の中心に保つ必要があります。腱板が弱っているのに三角筋を強く動かすと、上腕骨頭が上にずれやすくなります。それでは肩関節が安定しません。