ピラティス・ヨガも肩関節を痛めるリスク
大胸筋と三角筋がターゲットになっている筋トレは、けんばん断裂の視点からすると、どれもおすすめできません。
体幹を安定させ、しなやかな体作りによいとされているピラティスもまた、肩を過剰に動かす動きはおすすめしません。ピラティス専用機器の「リフォーマー」を使ったエクササイズ中に、両肩を脱臼してしまったという報告もあります(*3)。
ヨガも、正常な肩の可動域を超えようとする動きや、手や肩で体重を支えるようなポーズでは、肩関節を痛めるリスクがあります(*4)。
これらをおこなうなら、くれぐれも、ご自身のレベルや年齢に合う、医学的知識も豊富なインストラクターを選ぶようにしてください。
強い負荷ではアウターマッスルという三角筋や大胸筋などが動員されてしまうため、インナーマッスルを効率的に刺激することが難しくなります。だからこそ、インナーマッスルを効率的・効果的に使うための訓練としては、弱い負荷であることが必要になります。
私の経験的な知見、そして複数の論文をもとに導き出した結論をお伝えします。健康の維持・増進が目的であれば、年を重ねるほど、肩関節ではインナーマッスルのトレーニングに絞ることをおすすめします。代わりに、体幹と下半身のアウターマッスル(特に太ももの前や裏など)を鍛えるトレーニングを頑張ることが、健康を維持・増進するのに役立ちます。
60代以上のおすすめスポーツは「水中歩行」
ボウリングで球を投げる前に、腕を真後ろに上げますね? あのような肩関節の「伸展(後方挙上)」は、基本的にけんばん断裂にはよくない動作です。真後ろまで上げなくても、後ろに引く動きが入ると、痛みを感じることがあります。
そもそも肩の伸展は、肩関節に負荷をかける動きです。水泳のクロール、ゴルフのバックスイング、テニスや野球でボールを打つ前に腕を後ろに引く動きなどにも、伸展の要素が入っています。
オーバーヘッドスポーツの競技者は、痛みがなくてもMRI検査で40%の人にけんばん断裂が見つかりました(*5)。野球、テニス、バレーボールなどオーバーヘッドスポーツをする方は、たとえ痛みがなくても、肩の中は消耗していることがあるのです。
60代以上の方にいちばんおすすめしたいスポーツは、水中歩行です。加齢とともに弱る下半身のアウターマッスルを鍛える運動だからです。ビート板を使ったバタ足や水中エクササイズをすると肩を使うことにはなりますが、それぐらいならいいでしょう。
(参考文献)
*1 Tung MJY, et al. 2024. Injuries in weightlifting and powerlifting: an updated systematic review. BMJ Open Sport & Exercise Medicine 10: e001884.
*2 Noteboom L, et al. 2024. Effects of bench press technique variations on musculoskeletal shoulder loads and potential injury risk. Frontiers in Physiology 15: 1393235.
*3 Ergün et al. Physiotherapy Theory and Practice, 2023; 39(3): 667-674.
*4 Cramer et al. BMC Complementary and Alternative Medicine, 2019; 19(1): 190.
*5 Connor PM, Banks DM, Tyson AB, et al. Magnetic resonance imaging of the asymptomatic shoulder of overhead athletes: a 5-year follow-up study. Am J Sports Med. 2003; 31(5): 724-727.
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