体重計の数字が変わらなくても、運動を始めれば肝臓の脂肪は減らせる。岡山大学の川中美和教授は「続けられない理想より、今日変えられる1つを選ぶほうがいい」という――。

飲酒しない痩せ型でも脂肪肝かもしれない

肝臓は、食事から得た栄養の加工・貯蔵、体に必要なたんぱく質の合成のほか、薬やアルコールの解毒、消化を助ける胆汁の分泌を担っています。いわば、体の代謝を支える中枢です。

多少の異常があっても自覚症状が出にくいため、肝臓は「沈黙の臓器」といわれています。仕事や日常生活を普通に送れていても、肝臓には変化が起きている場合があるため、体調がいいからといって肝臓が健康であるとは限りません。

肝臓に余分な脂肪が蓄積した状態のことを脂肪肝といいます。日本では、およそ3人に1人が脂肪肝といわれており、男性では30代後半〜50代の働き盛りに最も多い印象です。一般的に脂肪肝は肥満の人がなりやすいのですが、日本人では太っていない人にも見られます。最近は痩せた方でも脂肪肝と診断されるケースが増えています。

脂肪肝の原因として、お酒はその一つに挙げられますが、食生活や運動不足も関わっています。飲酒と肥満・糖尿病・脂質異常などの代謝異常が重なる脂肪肝をMetALD(代謝機能障害アルコール関連肝疾患)といいます。脂肪肝を改善するには、お酒だけでなく食生活や運動などの生活習慣全体を見直す必要があります。

脂肪肝を「みんな持っている病気だから」と軽く考えている人もいますが、脂肪肝の中には進行して肝炎や肝硬変、ひいては肝臓がんを発症する例が確実に紛れています。

肝臓に脂肪がたまると、一部では炎症や肝細胞の障害が起こります。障害と修復を繰り返すと線維が増え、肝臓に傷跡が残ります。この状態を線維化といいます。線維化が進んで脂肪肝が肝硬変に進行すると、肝臓がんになるリスクも高まります。

脂肪肝の時点なら、まだ改善できますが、肝硬変まで進行すると治療は困難です。そのため、脂肪肝は早期に発見して、改善の余地が大きいうちにしっかり治療する必要があります。肝硬変を発症するまでの期間は推測できないため、脂肪肝の進行を防ぐには、自分の現状を知ることが大切です。

健康診断は、肝臓だけでなく全身の代謝を見直すきっかけです。肝硬変や肝臓がんを防ぐためにも、脂肪肝を放置せず今日から対策を始めましょう。

続かない日本食生活より1つの小さな改善が大事

日本肝臓学会が取り組んでいる「奈良宣言2023」では、ALT値が30を超えたら、かかりつけ医への受診が推奨されています。ALTとは、肝細胞が傷つくと血液中に増える酵素です。

脂肪肝の診断はγ-GTPやALT、ASTなどの肝臓の検査値だけでなく、BMIや血糖値、飲酒量なども確認します。肝臓の検査値からは傷み具合を知ることはできますが、これだけでは全身の代謝まではわからないからです。

(構成=中澤理佳 イラスト=前田はんきち)