健診の目的は「早期対処」判定区分は参考程度に

健康診断は「健康の通信簿」のようなものかもしれません。結果の入った封筒を開けるとき、誰もが少しは緊張するはずです。そこに「要再検査」や「要精密検査」と書かれた項目があったら一体どうすればいいのでしょうか。

私は総合診療医として、自治体と共に健康診断の受診率を上げる取り組みに関わってきました。現在は大学病院の人間ドックや地域の中核病院で、健診で引っかかった人の診察や事後対応に当たっています。そこで今回は「要再検査」が出たときの受診の段取りについて、順を追ってお話しします。

まず知っておいてほしいのは、健診の検査項目がどう選ばれているか、です。人間ドックは別ですが、会社や自治体の健診の項目は基本的に、「早く見つけて早期対処すれば、きちんと効果が得られるもの」が選ばれています。つまり、健診で数値が引っかかったということは、「今のうちなら十分改善の余地がある」というお知らせなのです。医師としての本音を言えば、何かしらの数値が引っかかったら、できるだけ早く動いてほしいと思っています。

一方で、結果票の判定区分に一喜一憂する必要はありません。実は判定区分には、全国共通の明確な基準があるわけではないのです。数値をどう判定するかは健診機関によって多少異なりますし、機械的に判定を出したあと、医師が過去の結果などを見ながら最終的に判定を微調整することもあります。大枠はほぼ同じですが、施設や医師の裁量が入る余地もあるわけです。

そもそも医師は、一つの数値だけで病気を判断しません。ほかの検査項目との組み合わせや持病、これまでの経過を合わせて考えます。ですから正直に言うと、「要再検査」と「要精密検査」の違いを、医師はあまり気にしていません。要精密検査と出た人を実際に診察してみたら、経過観察で十分だったというケースもあります。大事なのは区分の違いではなく、「要再検査以上の判定が出たら、一度受診して医師の判断を仰ぐ」ことです。

なお「経過観察」であれば、一般的にはすぐに受診しなくてもかまいません。ただ、ここも基準があいまいな部分なので、気になるようなら遠慮なく相談してください。

症状ゼロのまま進行する動脈硬化と「沈黙の臓器」

では引っかかった項目を放置するとどうなるのか。正式な医学用語ではありませんが、私は健診の項目を大きく3つのグループに分けて考えています。

1つ目は「動脈硬化グループ」。血圧、血糖、コレステロールや中性脂肪といった項目です。高血圧、糖尿病、脂質異常症は、初期にはほとんど症状がありません。ところが放置すると動脈硬化がじわじわと進み、心筋梗塞や脳梗塞の原因になります。心疾患は日本人の死因の第2位で、脳血管疾患も上位に入っています。

2つ目は「沈黙の臓器グループ」。肝臓(AST、ALT、γ-GTPなど)と腎臓(クレアチニン、eGFRなど)の項目です。動脈硬化グループ以上に、限界を迎えるまで症状が出ません。数十年単位で放置して臓器が使いものにならなくなったところで、ようやく強い症状が現れます。

肝硬変や肝不全になれば、おなかに水がたまる、黄疸が出る、意識がもうろうとするといった症状が出ますし、腎不全になれば老廃物を排泄できなくなり、透析が必要になります。早い段階であれば治療の選択肢は増えているので、症状が出る前に手を打ちたいところです。

(構成=本誌編集部)