HbA1cが13.7%という数値が出たため即刻入院。絶望的な気持ちになったが……。徹底した食事制限を続け、1年で寛解したノンフィクション作家の闘病記。

受診初日から始まったインスリン注射

私の糖尿病が発覚したのは、まったくの偶然です。フリーランスの気楽さにかまけていた私は、健康診断を長い間受けていませんでした。しかし50代半ばを過ぎると、痰たんが絡んで喉の具合が悪くなりました。ヘビースモーカーだった過去もあるので、「これは絶対、肺がんに違いない」と近所の内科クリニック(以下、駅前内科)へ駆け込んだのが、一昨年の5月。この日は「後鼻漏こうびろう」という診断を受け、処方された抗生剤で痰は出なくなりました。

ところが1週間後、駅前内科から緊急の呼び出しがあり、医師に宣告されました。

「血液検査の結果が出たら、血糖値がものすごく高い。これはもう、典型的な糖尿病ですね」

200mg/dL以上だと糖尿病型だとみなされる随時血糖値が、478mg/dL。6.5%以上が糖尿病型と判定されるHbA1cは、13.7%もあったのです。無知だった私は、この数値の異常さすら理解できませんでした。

私の血糖値は常軌を逸する数値だったため、駅前内科の医師に中核病院を紹介され、そこの受診初日からインスリン注射を打つ羽目になりました。糖尿病になったことを初めて後悔したのは、このときです。

その後、2週間もの「教育入院」が待っていました。そこでは、糖尿病と合併症の恐ろしさ、つまり網膜症による失明や、足の壊疽えそで切断に至った症例、血管障害の怖さなどを、医師の講義やDVDによって嫌というほど叩き込まれたのです。

糖尿病の合併症は、頭文字を取って「しめじ」と「えのき」だそうです。し=神経(糖尿病神経障害)、め=眼(糖尿病網膜症)、じ=腎臓(糖尿病性腎症)。え=壊疽、の=脳梗塞、き=狭心症・心筋梗塞。

入院3日目から、メトホルミンという薬も処方されました。インスリンの分泌を促すタイプではなく、筋肉への糖の取り込みに働きかける薬です。

ところがこの教育入院中、私は強い違和感を抱くようになります。「糖質制限」については、本を何冊か読んで勉強していました。江部康二医師や山田悟医師の著書にある「血糖値を跳ね上げるのは糖質だけ。糖質さえ抑えれば、肉や魚、野菜や脂質をお腹いっぱい食べても、血糖値は上がらない」という理論に惹かれていたのです。

なのに病院で出される食事は、正反対の内容でした。糖質制限どころか、どんぶりに盛られた200グラムもの白米や6枚切りの食パン1.5枚。おかずには、血糖値を上げやすいとされるニンジンやサトイモが出るのです。栄養指導で教えられた通りの伝統的なカロリー構成、すなわち「炭水化物6割、タンパク質2割、脂質2割」に基づいて作られた献立でした。

(構成=石井謙一郎)