投薬治療が必要な3つのケース
尿酸値の正常値(基準値)は7.0mg/dLまで。これを超えると「高尿酸血症」と診断されます。最大のリスクは「痛風」です。足の親指の付け根が突然腫れ上がり、激痛に襲われます。ただ、7.0を超えたからといって、すぐに痛風を起こすわけでも、すぐ薬を飲まなければならないわけでもありません。食生活を見直し運動をするなど、生活改善を始めるサインと捉えてください。自覚症状がなくても、そのまま放っておくのはよくありません。注意すべきは痛風だけではないからです。尿酸値が高い状態が長く続くと、腎臓に石ができる「尿路結石」や、尿酸が腎臓の組織に沈着して腎機能が低下する「痛風腎」のリスクが高まります。血管への影響を介して、「腎臓病」や「心筋梗塞」「脳梗塞」も増えます。尿酸値が7.0を超えたら、生活習慣改善に取り組んでください。
状態によっては投薬治療が必要になることもあります。『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』では、①尿酸値が7.0超で、すでに痛風を起こしている人、②痛風はないが尿酸値が9.0以上の人、③高血圧、血管の病気、高コレステロールなどの合併症がある人で尿酸値が8.0以上の人は投薬治療の対象となっています。つまり、痛風がなくても、合併症があれば薬が必要になることがあるのです。
高尿酸血症の人は圧倒的に男性が多く、なかでも痛風患者の約95%が男性で女性は5%程度です。ただし最近は女性にも高尿酸血症の人が増えつつあります。働く女性が増えて、男性と似た生活習慣、暴飲暴食、運動不足による肥満などが増えていることが関係していると思われます。女性だからといって安心はできないのです。女性は、男性と基準が少し異なります。エストロゲン(女性ホルモン)の働きで尿酸が排泄されやすく、男性より尿酸値が1.5ほど低いからです。女性の6.0超は、男性の7.0超に近い状態といえます。女性は6.0を超えたら生活習慣の見直しを考えたほうがよいでしょう。特に腎臓病などがある女性は、尿酸値が6.0を超えると悪影響が出るという報告が多く、注意が必要です。
鶏卵やイクラよりたらこやレバーに注意
尿酸値を下げるには、体に取り入れるプリン体の量を減らし、排泄する尿酸の量を増やすことが大切です。前者は食事の改善が重要ですが、誤解も少なくありません。尿酸は、プリン体が肝臓で分解された結果生じる「老廃物」です。よって、プリン体が多く含まれる食物には注意が必要です。プリン体は細胞に含まれます。そのため、細胞が小さく密なものほど、多く含まれます。たとえば、鶏卵は大きな細胞1つなのでほぼ含まれず、痛風の人が食べても大丈夫です(コレステロールは別の話です)。イクラも1粒が細胞1つですから、プリン体の多い食材ではありません。反対に粒の小さいたらこはプリン体が多めですし、レバーなどの内臓類も細胞が密なため、多く含まれます。しらす干しなど、内臓ごと食べる小魚も比較的多めです。
一方で肉の脂身にはプリン体がほぼなく、カルビやバラ肉も意外に少なめです。逆に赤身肉や鶏の胸肉、ささみは多く、ダイエットや筋トレで選びがちですが、大量に食べると尿酸値が上がることがあります。
ビール好きな人には、プリン体カットと表記された発泡酒をおすすめします。また、「焼酎やウイスキーなどの蒸留酒はプリン体がゼロだから大丈夫」と考えている人も少なくありません。ビールを蒸留酒に替えることは無意味ではありません。ただ、蒸留酒でもたくさん飲めば、アルコール自体が尿酸値を上げます。アルコールには、①腸管でプリン体を吸収しやすくする、②肝臓で尿酸の産生を加速する、③腎臓からの尿酸の排泄を抑制する、働きがあるからです。
調理法も関係します。プリン体は水溶性なので、煮たり茹でたりすると汁に移り、食材のプリン体は減ります。ただし、そのスープを飲んだり料理に使ったりすれば意味がなくなります。しゃぶしゃぶのスープは飲まないほうがいいでしょう。
食事で摂り入れるプリン体を減らすことは大切ですが、プリン体の7〜8割は体内でつくられ、食事由来は2〜3割程度です。プリン体の推奨摂取量は1日400mg以下ですが、痛風患者でも400mg前後の人が多く、プリン体の摂りすぎだけが原因とはいえません。レバーやエビなど、プリン体の多い食材を把握し、そればかり食べたり、続けたりしなければ十分です。
併せて実践したいのが、尿酸を排泄しやすくすることです。たとえば、水分を十分に摂るのは有効です。体内の尿酸の約7割は「尿」から排泄されます。体内の水分が不足して尿量が減ると、尿の中に溶け出す尿酸の量が減り、体内に溜まりやすくなってしまいます。6〜8月には痛風発作を起こす人が2割ほど増えますが、脱水が大きく影響しています。1日2L程度の水分を目安にするといいでしょう。水のほか、無糖の炭酸水やお茶でもかまいませんが、糖分を含む清涼飲料水は摂りすぎないようにしましょう。
肥満も尿酸の排泄を妨げます。内臓脂肪が増えすぎると、体内でインスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」の状態になります。それを補おうとして体内ではインスリンが過剰に分泌されるようになります。インスリンには「腎尿細管で尿酸を再吸収(体内に戻す)させる働き」があるため、過剰に分泌されると尿酸が体外へ排泄されにくくなり、血液中に溜まって尿酸値が上がってしまいます。摂取カロリーを控えて、肥満を改善することが効果的です。ただ、ダイエットをするときには、注意が必要です。過剰な糖質制限は、尿酸値上昇の一因であることがわかってきました。もともと摂りすぎている人が少し控えるのはかまいませんが、ほぼ糖質を摂らないなど、極端に制限するのは良くありません。乳酸がつくられて尿酸の排泄を妨げます。尿酸値が高い人や痛風のある人は控えてください。
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