なぜ病院では正常なのに家では高くなるのか
健康診断で測る血圧の数値に一喜一憂する人がいます。しかし、その数値は、ある一瞬の血圧にすぎません。しかも、本当は数分間ゆっくり休んでから測るべきですが、その余裕がない健診も多い。大勢の人がいるざわざわした場所で、「さあ、測りましょう」といきなり測る。このようなシチュエーションでは、日常の血圧を反映しているとは、およそ言いがたいのです。健診で測られた血圧は、あくまで目安にすぎません。
その人本来の血圧は、家で測る「家庭血圧」に表れます。毎日、朝と晩に測れば、普段の血圧をより正確に把握できます。将来、脳卒中や心筋梗塞になりやすいかどうかも、健診や病院で測った血圧より家庭血圧のほうが、はるかに正確に予測できるのです。
健診で「血圧が高い」と言われたら、家庭用の血圧計で家庭血圧を測り、その記録を持って受診してください。
健診の数字と家庭血圧とがずれる人は、珍しくありません。私の患者さんのデータを見ても、家では120〜130mmHg(以後、単位略)程度でも、病院で測ると160という人が一定数います。病院で測るだけで血圧が上がる状態を「白衣高血圧」と呼びます。これは、慣れれば正常になる、というものではありません。
健診の結果が高くても、家での血圧が正常なら、基本的に治療の必要はありません。治療するかどうかを判断するために、家庭血圧の記録は不可欠です。ただし、白衣高血圧の人も長期的に見ると家庭血圧が上がってくるという報告がありますので、決して問題がないわけではありません。薬は使わなくても、経過を見る必要はあります。「白衣高血圧」は女性に多いこともわかっています。
しかし、それより要注意なのは、「仮面高血圧」です。これは、家で測ると高いのに、病院では低いというタイプです。
家庭では特に朝の血圧に注意です。たとえば、お酒を飲む人。晩酌をすると血管が開き、夜の血圧は下がります。ところが、朝はその反動で上がってしまうのです。飲まない日と比べると、夜は飲んだ日のほうが低く、朝は前の晩に飲んだ日のほうが高くなります。この揺り戻しの大きさが、健康上のリスクになるのです。
朝の高血圧には、2つのタイプがあります。一つは、起床とともに交感神経のスイッチが入り、跳ね上がるタイプで、若い人に多い。もう一つは、夜の高い血圧を朝まで持ち越すタイプで、高齢の人や糖尿病の人、腎機能が低下した人に多いのですが、実は、こちらのタイプのほうが多いのです。
高齢の方で、お酒好きなのに朝早くに起きて、犬の散歩やラジオ体操に出かける人がいます。その人の血圧はかなり高い可能性があります。これからの寒くなる時期は、なおさら高くなることが懸念されます。元気に見えて、本当は危険な状態なのです。
仕事を持つ30〜50代では、職場のストレスから、昼間に上がるタイプもありえます。日曜は低いのに、月曜になると血圧が上がってしまう人はよくいます。また、シフト勤務や残業が多い人、睡眠が十分に取れていない人も高くなりやすい。逆に、定年退職して職場のストレスや夜の飲み会などが減って、血圧の薬を減らすことができた人もいます。
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