退職金を割増でもらえる早期退職の募集に、もし自分が直面したらどうするか。実際に決断を下した3人に、よかったことと後悔していることを聞いた――。

【ケース3】断った人

退職金「通常の2倍」に心が揺れた
しかし悔いなき転職をできる気がしなかった

昇進した矢先に届いた募集メールに不安になる

2度あった早期退職募集に2度とも応じず、いまも同じ会社で働き続けるBさん(53)。応募しなかったことに後悔はない。それでも、業界の将来への不安は消えていない。

Bさんの会社(以下、B社)はもともと伝統的な製造業の大企業だが、かなり以前から業界全体に時代の変化が押し寄せている。現在、Bさんが携わる仕事の内容も、数年前の会社のイメージからはまったく想像もつかないものだ。早期退職の募集も、会社がこのままでは生き残れないと判断したからだろうとBさんは話す。

Bさんは20年前、33歳のときにB社の知人にスカウトされる形で転職した。その前に勤めていたのは大手通信企業。経営戦略に関わる仕事に従事していた。

「いまならAIであっという間にできてしまうかもしれませんが、当時はなかなか大変な仕事でした。でも経営判断に影響を与える大事な仕事だったとは思います」

このようにBさんは振り返る。しかし、Bさんはかねて希望していた現在の仕事ができるという理由で、B社に転職する。

「自分たちが作ったものをユーザーが使っているのを目の当たりにすると、ものすごく感動しますよ。前職での仕事はちょっと無機質な部分もあったけれど、いまの仕事は本当に心が揺さぶられます。会社のなかでも人気の部署なんですよ」

多忙なときは残業もあるが、それは自分たちの作ったものがよく売れている証拠。だから不平不満は出にくいのだという。

そんなBさんが直近で早期退職募集のメールを受け取ったのは、昨年の12月。昇進して間もないタイミングだった。

「あれっ、このメールは僕一人に送られてきたのかな。会社から評価されていると思ったのは、自分の思い上がりだったのだろうか」と一瞬、不安になったという。

しかし、「いろいろな人から話を聞いたところ、どうやら一定以上の社員全員に一斉に送られたらしいことを知りました」とBさんは言う。勤続年数も所属部署もまったく関係なく、ただ年齢だけで線引きをしたようだ。

(文=長山清子)