多くの企業が導入している「再雇用」制度。定年後にどう働きたいかを考え、会社と対話をしながら、納得できる条件に近づくための交渉のポイントを紹介する。

60歳定年後も9割弱が継続雇用される

定年後も働き続けるとき、有力な選択肢の一つとなるのが、これまで勤めてきた会社での再雇用です。企業には「高年齢者雇用安定法」によって、65歳までの雇用確保措置を講じることが義務付けられています。

新たな働き口を探す必要がなく、これまでの経験を生かしやすいことは、再雇用で働くメリットの一つです。

ただし、定年でいったん雇用契約が終了し、再雇用で新たに契約を結ぶため、労働条件が見直される場合があります。勤務先も、これまでと同じ職場とは限りません。一定の要件のもと、子会社やグループ会社を継続雇用先とする制度も認められるからです。したがって会社から提示された条件を確認し、希望と異なる点があれば、会社と話し合いながら条件をすり合わせていくことが必要になります。

給与や労働時間などについて希望を伝えるためには、早めに準備を始めたうえで会社と対話をしていくことをおすすめします。

平均寿命が延びるなか、シニアの就業者割合は上昇しています。内閣府「令和7年版高齢社会白書」によると、男性の就業者割合は60〜64歳で84.0%、65〜69歳で62.8%となっています。雇用形態はさまざまですが、60歳を境にその構成は大きく変化します。役員を除く雇用者のうち、非正規雇用者の割合は、男性の55〜59歳では10.3%ですが、60〜64歳では41.3%に高まります(同前)。60歳以降、非正規雇用で働く人の割合が大きく増えていることがわかります。

60歳定年企業では、定年を迎えた人の87・4%が継続雇用されています。継続雇用を希望しない定年退職者は12.5%、継続雇用を希望したものの継続雇用されなかった人は0.1%です(厚生労働省 令和5年「高年齢者雇用状況等報告」)。

企業の65歳までの雇用確保措置義務について、具体的な方法は3つあります。厚生労働省の令和7年「高年齢者雇用状況等報告」によると、雇用確保措置を実施済みの企業のうち、①定年制の廃止(3.9%)、②定年の引き上げ(31.0%)、③継続雇用制度の導入(65.1%)となっています。つまり、65歳までの雇用確保措置として、多くの企業が継続雇用制度を導入しているのが現状です。

なお65歳から70歳までの「就業確保措置」は、高年齢者雇用安定法によって、現時点では企業側の努力義務とされています。その手段は前述の3つに加え、業務委託契約の締結や社会貢献事業への従事といった、雇用以外の選択肢も含まれます。65歳までとは働き方が変わるので、注意が必要です。実施している企業は34.8%にとどまっているのが実状です(厚生労働省 令和7年「高年齢者雇用状況等報告」)。

パーソル総合研究所の調査によると、60歳で処遇を見直す企業では、60歳前後で年収が平均28%下がっています。ただし、これはあくまで平均で、実際の年収の変化には企業によって大きな幅があります。

再雇用後に仕事内容や役割、責任の範囲が変われば、それに伴って賃金などの待遇が変わることもあります。一方、仕事内容や責任が定年前と変わらない場合には、待遇差について会社に説明を求め、理由を確認することも大事です。

(構成=石井謙一郎 イラストレーション=伊野孝行)