残酷なほどに広がる、50代の「世代内格差」。会社を辞める前に必要な収入を逆算し、「第二の収入」の種を仕込む方法について、5万人以上の会社員と向き合ってきた「人材のプロ」に聞いた。

50代で「稼げない人」は会社員のうちに種まき

定年が見えてくる50代は、その会社における自分の立ち位置が残酷なほどにわかってくる年代です。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2025年)によると、基本的には年齢が上がるごとに賃金も上がり、男性は「55〜59歳」が最も高く、平均月収は44万5600円となっています。年収にすると約535万円で、ボーナスがつく人であれば年収600万円を超えるかもしれません。転職サービスのdoda(デューダ)の調査(25年12月)でも、全世代の中で最も平均年収が高いのは「50代以上」で601万円。年齢別のピークは59歳の717万円となっています。平均値だけを見れば、「最も稼いでいる世代は50代」であることは間違いありません。

ただ、平均の数字だけでは実像は掴めません。同じ50代以上でも、一番人数が多いのは年収300万円台で、17.9%を占めます。一方、年収1000万円以上の人が12.5%と、全年代の中で最も高い割合になっています。年収が極端に高い人と低い人が同じ世代の中で入り交じっているのが、50代会社員の実態なのです。

私は長く各社の人事制度の改定に携わってきました。かつての年功序列が当たり前だった社会では、年齢が上がれば給料も上がっていくのが当然でした。ただ、00年頃から成果主義への転換が進み、昇格しなければ報酬が上がらない仕組みに変わっていきました。人事の立場から率直に言わせてもらうと、成果主義とは「9割の社員の給与はそのままに、1割の社員を厚遇する」制度です。結果として、50代の中で勝ち組と負け組がくっきり分かれることになりました。

役員や部長まで上がった人は年収が1500万〜2000万円に届く一方、平社員のまま定年を迎える人は若い頃から年収がわずかしか増えません。結婚して子どもを育て、マイホームを持つような「標準的な家庭」は、マジョリティーではなくなったのです。

50代になってから、急に目に見えるような成果を上げて昇進するのは現実的ではないでしょう。また、仮にそれが叶って昇進・昇給したとしても、残る会社員生活は長くないことを考えれば、生涯年収に与える影響は軽微です。

であれば、会社員であるうちから「第二の収入」を得る方法を考え、そのために様々な「種まき」をしておくことが欠かせません。その方法と選択肢についてお伝えします。

まずは「必要年収」を逆算 把握すべき「3つの変数」

仮に今の会社を辞めて、新しいキャリアを始めるのなら、まず今後の人生でどれくらいの収入が必要かを見積もらなくてはいけません。それがわからなければ、どんな仕事・働き方を選択するべきかが判断できないからです。

ライフプランを考えるうえで大きく効いてくる変数が3つあります。「住居費」と、子どもがいる場合の「教育費」、そして「親の介護費」です。

住居費は、住宅ローンならいつまでにいくら払い終えるのかをはっきり割り出せます。賃貸でも、月々の家賃からおおよその総額を見積もることができるでしょう。教育費も、中学から私立に進むのか、大学まで公立に行くのかなどでかなり違ってきますが、大体の見当はつけられます。

(構成=渡辺一朗 図版作成=大橋昭一)