女性の年金は夫の立場によっても変わるので、世帯単位で考える必要がある。将来どんな年金を受け取れるのかを把握し、不足しそうならどう補えばいいかを検討したい。

年下の専業主婦なら加給年金の対象に

公的年金の仕組みは複雑ですが、大切なのは「自分のライフスタイルの場合、将来もらえる公的年金はどうなるのか」です。ここでは立場別に6つのタイプに分け、老後に受け取れる老齢年金と、夫に万一のことがあった場合に受け取れる遺族年金について紹介します(※1)

※1:年金の受給や加給年金額などの加算には要件が設けられている。そのため、それぞれのタイプに該当する場合でも記載の通りに受け取れないことがある。

▼専業主婦(妻・専業主婦、夫・会社員)

このタイプでは、65歳から妻は老齢基礎年金を、夫は老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取れます。妻に過去に会社員として働いていた時期がある場合は、その分が老齢厚生年金として妻の年金に上乗せされます。また、夫が65歳になって老齢厚生年金を受け取り始める際、妻が65歳未満(年下)で夫に生計を維持されている、夫の厚生年金加入期間が20年以上などの要件を満たせば、妻が65歳になるまで夫の年金に加給年金が加算されます。2026年度は年約42万円ですが、28年度からは約1割引き下げられ、約38万円になる予定です。

一方、夫が亡くなった際の遺族年金は、子どもの有無によって異なります。子どもがいる場合は遺族基礎年金と遺族厚生年金を受け取れますが、遺族基礎年金は子どもが18歳になる年度末までの受給です。子どもがいない場合は遺族厚生年金のみです。遺族基礎年金を受け取れないケースでも、妻が40歳以上65歳未満であれば中高齢寡婦加算が受け取れます。また、遺族厚生年金は改正が予定されています。これまで、夫が亡くなった時点で妻が30歳以上なら、遺族厚生年金を終身受け取れました。しかし28年4月以降は、夫が亡くなった時点で妻が60歳未満かつ子どもがいない場合、原則として遺族厚生年金は5年間の有期年金となります。

▼共働き(妻・会社員、夫・会社員)

このタイプでは、妻も夫も65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取れます。ただし、妻が年下であっても、専業主婦の場合とは異なり、加給年金の対象にならない場合もあります。加給年金を受け取るには、夫が65歳になった時点で妻の年収が850万円未満である必要があるためです。それでも加給年金を受け取りたい場合は、働く時間を減らして年収を抑えプライベートを充実させた生活にシフトするのも一つの選択肢です。

秦 まり子さん
秦 まり子 Mariko Hata
社会保険労務士。青山学院大学卒。会社勤めの後、2004年に社労士登録。以来、年金や労務管理に関する執筆、相談対応・助言、制度改正に伴う規程の改訂などの業務を行っている。著書に『にゃんこと学ぶ女性の年金入門』(金融財政事情研究会)がある。

また、会社員の妻には、出産や育児で働けない期間の支援制度もあります。産休や育児休業期間中は本人負担分・会社負担分ともに年金保険料が「免除」されます。免除されている間も「保険料をきちんと納めたもの」として将来の年金額が計算されます。さらに、時短勤務などで一時的に給料が下がった場合でも、子どもが3歳になるまでは「出産前の高い給料水準」のまま年金額を計算してもらえます。

夫に万一のことがあった際、「自分の年金に夫の遺族厚生年金がそのまま上乗せされるのでは」と考える人も少なくありませんが、実際には遺族厚生年金と自分の老齢厚生年金は「相殺(差額支給)」される仕組みになっています。まず自分の老齢厚生年金を優先して受け取り、亡くなった夫の遺族厚生年金(夫の厚生年金の4分の3または所定の方法で計算した額)のほうが自分の年金より多ければ差額が上乗せされます。

自営業は月400円で年金を上乗せできる

▼共働き(妻・自営業、夫・自営業)

このタイプでは、妻も夫も65歳から老齢基礎年金を受け取れます。会社員と比べて将来の年金額が少ないことに不安を感じる人も多いでしょう。その場合は、上乗せ制度の活用をおすすめします。まず付加年金です。国民年金保険料に毎月400円(付加保険料)を上乗せすると、年金受給時に「200円×付加保険料を納めた月数」の額が加算されます。支払った保険料は2年で元がとれるため、非常にお得な制度です。また、国民年金基金の利用も可能で、公的年金と同様に終身で年金を受け取れます。iDeCoの活用も効果的です。国民年金基金とiDeCoを合わせた掛け金の上限は月額6万8000円(※2)です。

※2:自営業者やフリーランスの、国民年金基金とiDeCoを合わせた拠出限度額は、2026年12月に月額7万5000円に引き上げられる。

また、自営業には定年がないため、生涯現役で働くつもりの人も多いでしょう。65歳以降にどれだけ稼いでも年金が減らされることはありません。会社員の場合、65歳以降に給与と年金の合計が65万円を超えると、年金の一部または全部が支給停止になる「在職老齢年金」の仕組みがありますが、自営業はそれを気にせず働くことができます。加えて、自営業の女性が出産をする際は、産前産後の一定期間、国民年金保険料が免除されます。免除期間は「保険料を全額納付した」として、将来の年金額に100%反映されます。

(構成=プレジデント編集部)