生産性を上げるオフィスは何が違うか。2000年代への変わり目にもてはやされた無駄を過ぎ落としたオフィスは、当時は一番効率的な環境だと考えられていたが、それは間違いだったという。英作家のマシュー・サイドさんが書いた『多様性の科学 勝てる組織の条件』より、紹介する――。
※本稿は、マシュー・サイド『多様性の科学 勝てる組織の条件』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
無駄を削ぎ落としたオフィスの流行
多様性に関わる研究で私が特に興味深いと思ったものの1つに、エクセター大学の心理学者、クレイグ・ナイトが行った実験がある。ナイトは学者になる前はセールスマンで、いつもイギリス中を飛び回っていた。
そんな中、ウェスト・ミッドランズ州のある企業で、彼は標準化の恐ろしさをまざまざと目にした。なんの飾り気もないがらんとしたオフィスに、無機質なメラミン樹脂製のデスクと椅子が整然と並んでいたのだ。当時はそれが流行りのスタイルだったという。
ナイトはこう振り返る。
「無駄を削ぎ落としたオフィス」というコンセプトが、2000年代への変わり目にもてはやされていました。個人的なものは何も飾ってはいけませんでした。写真も、絵も、植物も。そういうものはみな仕事の邪魔になると言われていました。当時はそれが一番効率的な環境だと考えられていたんです(※1)。
ナイトは当時、オフィスというオフィスで同じ光景を目にした。経営者は標準化されたオフィスを自慢げに見渡し、従業員はその中であくせくと働いていた。当時の経営者はそれが生産性を引き上げる実質的な方法だと信じていた。しかし心理学の知識があったナイトは懐疑的だった。
※1 当人への取材より。

