フィンランドは「世界一幸せな国」と言われる。なぜなのか。Googleを経てフィンランドに移住し、現地企業で働く大石由弥さんは「私が現地で暮らして肌で感じたのは、『人生における仕事の置き場所』の違いだった」という――。

※本稿は、大石由弥『幸せの国フィンランドに学ぶ「静かな人」の働き方』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

大聖堂の見えるヘルシンキの風景
写真=iStock.com/Vladislav Zolotov
※写真はイメージです

「世界一幸せな国」と呼ばれるフィンランド

ありのままで幸せに働くには、どうすればいいのでしょうか。

そのヒントを、私はフィンランドで見つけました。「日本の話ではないのに、なぜヒントになるの?」と思われるかもしれません。それでも、遠くの国に目を向ける意味はあると私は思っています。自分のいる場所では「当たり前」に見えることも、少し離れたところから眺めると、数ある選択肢の1つにすぎないと気づけるからです。

フィンランドは「世界一幸せな国」と呼ばれることの多い国ですが、ここでいう「幸せ」は、「今この瞬間、笑顔でハッピーか」を測ったものではありません。

私も最初は「幸せの国」と聞くと、みんながいつも陽気に笑っている国を想像しました。でも、実際に暮らしてみると、フィンランドの人はどちらかというと物静かです。じっくり考えてから言葉を選び、ひとりの時間を大切にする。日本の「静かな人」に近い感覚を持つ人がとても多いように感じます。

それでも、多くの人が自分の暮らしに深く納得し、「派手ではないけれど、これでいい」という手応えを、心の奥に持っています。つまり、「静かな人」に近い感覚と、「幸せ=人生への満足」が、この国では自然と共存している。私にはそう見えました。

会議で沈黙が出るのは普通のこと

この本を書くにあたって、職場の同僚たちに「静かなリーダーといえば、誰を思い浮かべる?」と聞いてみたことがあります。すると、歴史上の人物だけでなく、社内の人の名前がいくつも自然に挙がりました。ぐいぐい引っ張るカリスマ型でなくても、じっくり聴いて確かな判断を下す「静かなリーダー」が、この国の組織には当たり前のようにいるのです。

背景には、この国がエンジニア大国だという事情もあると思います。しっかり計画して、入念に準備します。口下手でも、緻密な働きぶりで評価される人がとても多いと感じます。「もっと積極的に」と急かされる場面が少なく、静かにしていることが、やる気のなさとは受け取られないのです。

たとえば、会議中に数秒の沈黙が流れても、焦っているのは私のような海外から移住した社員だけです。フィンランドの人々は、「今、相手は自分のペースで考えているんだな」と受け止めて、静かに待ちます。沈黙は、埋めるべき気まずさではありません。考えるための大切な時間です。