忙しいときにつぶやく言葉
この「急がなくていい」という感覚をよく表すことわざがあります。
『Hiljaa hyvää tulee(ヒルヤー・ヒュヴァー・トゥレー)』
「hiljaa(ヒルヤー)」には、「静かに」と「ゆっくり」の両方の意味があります。
だからこのことわざは、2通りに読めます。
1つは、「静かにしていれば、良い結果がやってくる」。
もう1つは、「良いものは、時間をかけて、ゆっくりやってくる」。
焦ってスピードを上げなくても、静かに続けていれば、良いものはちゃんとやってくる。そう、そっと背中をさすってくれるような響きが好きで、仕事に追われて息が切れそうな日、私はよくこの言葉を心の中でつぶやきます。
もちろん、タイパや素早い返答を求める風潮は、フィンランドにもあります。それでも同時に、じっくり時間をかけて良いものを生み出す価値観がしっかり根づいています。その空気の中で働くうちに、私はやっと深く息をつけるようになりました。あなたにも、その感覚を少しでもお裾分けできたらと思っています。
「幸せ」の意味
フィンランドは、よく「世界一幸せな国」と呼ばれます。私がフィンランドで働いていると話すと、「じゃあ毎日幸せなんですね」と思われるかもしれませんが、そういう訳ではありません。
というのも、この「世界一幸せ」は、みんなが毎日ニコニコ笑って暮らしている、という意味ではないからです。実際のフィンランド人は寡黙な人がたくさんいます。控えめで、初対面ではなかなか打ち解けません。日本人の私から見ても、「静かだなあ」と感じる人が多いくらいです。
では、その「幸せ」とは、いったい何を測ったものなのでしょうか。
それは、跳びはねるような高揚ではなく、「これでいいんだ」と自分にうなずける納得感。この本でお伝えしたい「幸せ」も同じ種類のものです。だから私は、この国のことから書き始めたいと思っています。

