「物価への不満」と指摘されているが…
11月3日に投票が行われた米中間選挙は、民主党が連邦議会の上下両院で多数派を奪還した。イランへの軍事行動に伴うガソリン価格の高騰など、生活費への不満が共和党に逆風となった。大統領職と議会を押さえていたトランプ政権は、民主党との調整を迫られる。
ただし、物価への不満を挙げただけでは、政治の変化を十分には捉えられない。同じ負担でも、未来への投資として引き受ける場合と、自分たちだけが支払わされていると感じる場合では、反応が違う。政権が掲げる目標と、暮らしの経験を結ぶものは何なのか。
拙著『古典で読み解く! 10年後の未来 何が世界を動かしているのか』(朝日新聞出版)では、AI、国家間の競争、政治や産業の変化を、個々のニュースの奥にある構造から考えた。「動因、始まり、成長、転換点、頂点、崩れ、終わり、反復性」という8つの要素に目を向ける。その際、特に重視した古典の一つが、ハルドゥーンの『歴史序説』である。
第5章「人口・移民・宗教――政治はどう動くのか」では、人々を結びつける力が政治を生み、その力が成功の後に変質する過程を扱った。今回も、誰が勝ったかに加えて、勝利を生んだ人々の関係がどう変わったかを問いたい。
権力を得るまで共有できた未来は、権力を得た後も共有されていたのだろうか。
MAGAの結束と多数派は同じではない
まず、「共和党が負けたのだから、MAGAの結束が崩れた」と見ることはできない。
MAGAとは、米国を再び偉大にするというトランプ氏の運動である。既存の政治への不信、自分たちの仕事や地域が軽視されてきたという感覚、社会の中での位置を取り戻したいという願い。それらを、国を取り戻すという物語に結びつけた。
ただし、共和党へ投票したすべての人が、その運動に同じ深さで帰属していたわけではない。指導者を自分たちの代表として強く支持する人もいれば、生活費や雇用、国境管理への期待から票を投じる人もいる。運動の中核と、選挙で多数をつくる支持連合は、範囲も結びつき方も違う。
中核の結束が強まる一方で、政権を成立させた広い支持基盤が細っていく。この2つは同時に起こり得る。必要なのは「結束があるか、ないか」という一括りの判断ではなく、誰と誰の関係が保たれ、どこが切れたのかを見ることだ。


