AIで中国に負けてほしくない。だが自宅の隣にデータセンターが建つのは困る。米オハイオ州ロードスタウンでは36億ドルの建設計画をめぐり、州最高裁は10月20日、村に敷地計画の審査を進める法的義務はないと全員一致で判断した。日本工業大学大学院技術経営研究科の田中道昭教授は「国家が競争に勝つために必要だとする施設を、その国家を支持する人々が拒む。この態度を、単なる矛盾として片付けるべきではない」という――。
データセンター
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「火」をだれが維持するのか?

2026年10月26日付の産経新聞と毎日新聞を並べて読むと、AI競争のもう一つの姿が見えてくる。最先端の半導体を確保し、優秀な技術者を集めても、それだけではAIを動かせない。電力と土地が要る。冷却の仕組みが要る。そして、施設の周囲で暮らす人々との関係が要る。

新著『古典で読み解く! 10年後の未来 何が世界を動かしているのか』(朝日新聞出版)の第1章では、人工知能をプロメテウスが人類にもたらした「火」に重ねた。今回の2つの報道が問いかけるのは、その火を誰が握るのかに加え、火を燃やし続けるための負担を誰が引き受けるのか、という問題である。

国家の希望と住民の不安

産経新聞が紹介したのは、中国・内モンゴル自治区のウランチャブで進むデータセンター集積だ。広い土地やエネルギー資源、冷涼な気候を生かし、AIを支える計算基盤を育てようとしている。中国の「東数西算」は、東部のデータ処理需要を西部の計算資源につなぐ構想である。

田中道昭『古典で読み解く! 10年後の未来 何が世界を動かしているのか』(朝日新聞出版)
田中道昭『古典で読み解く! 10年後の未来 何が世界を動かしているのか』(朝日新聞出版)

この発想では、草原は都市から離れた場所というだけではない。電力と冷却の条件が整えば、AI産業を支える拠点になる。産業の地図を描く条件に、計算を安定して動かせる場所かどうかが加わる。

同じ日の毎日新聞は、米オハイオ州ロードスタウンで起きている反対の動きを伝えた。自動車工場の閉鎖を経験した地域で、データセンターに新しい仕事を期待する人がいる。その一方で、電気料金、水資源、騒音などを心配する人もいる。トランプ氏を支持する住民の間にも、建設への反発があるという。

この計画をめぐっては、村の制度と開発業者の主張が、法廷で争われてきた。