国際競争への賛成と建設への同意

AI競争で米国が優位に立つことを望みながら、自宅の近くへのデータセンター建設には反対する。この態度を、単なる矛盾として片付けるべきではない。

国際競争への賛成と、個別事業の条件への同意は異なる。電気料金は上がるのか。安定した仕事はどれだけ生まれるのか。自治体の税収は増えるのか。そのために町は何を提供するのか。住民が知りたいのは、こうした具体的な内容である。

工事期間中の雇用と、稼働後に続く雇用も分けて見る必要がある。巨額の設備投資が行われるからといって、同じ規模の工場と同程度の恒常的な雇用が生まれるとは限らない。建設費の大きさだけを示しても、過去に工場を失った地域の期待に応えたことにはならない。

建設現場
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ロードスタウンの36億ドルという金額は、閉鎖された自動車工場の記憶を持つ地域にとって、本来なら歓迎されるはずの規模である。それでも住民が懸念したのは、電気と水道の料金だった。投資の大きさと、暮らしの負担は、別の勘定として受け取られている。

便利なAIは使いたい。国にも競争力を持ってほしい。しかし、その費用が自分たちへ偏る計画には同意できない。こうした判断は十分にあり得る。

事業者が反対を技術への無理解と捉えれば、説明はすれ違う。住民が問うているのが利益と負担の配分なら、AIの性能の高さを説明しても解決しない。

本書では、人工知能と民主主義、産業を別々の章で扱った。現実のデータセンター計画では、それらが同じ場所でつながっている。技術の未来を左右するのは、地域の生活と意思決定の仕組みでもある。

建設の速さと使い続けられる強さ

中国のように国家の方針と地域開発を結び付ける方式には、資源を集中させる力がある。他方で、建てた設備が十分に使われるか、電力や通信が安定して供給されるか、投資に見合う需要があるかは、別途確かめる必要がある。建設量だけでは、AIの競争力を測れない。

米国の地域で反対が起きることも、民主主義だからAI競争に負けるという結論には直結しない。協議によって費用負担や環境対策が改善されれば、稼働後の紛争を減らす可能性がある。反対に、何も決められない状態が続けば、必要な投資を逃すことになる。

住民の声を聞くことと、判断を先送りすることは違う。確認すべき事項を示し、条件を交渉し、期限を設けて判断する。その過程が、投資の見通しと地域の納得を支える。