10月24日、フランスで41万人が街頭に出た。一部が警察と衝突し、約1000人が逮捕された。運動の中心は大人ではなく、「教員が足りない」と叫ぶ高校生たちだ。世界有数の富裕国でありながら、貧困率は1996年以降で最も高い。日本工業大学大学院技術経営研究科の田中道昭教授は「なぜ最も貧しい国ではなく、豊かなフランスでデモが起きるのか。日本もまた、同じ構造の上で暮らしている」と指摘する――。
デモ行進のルート上で、一部の参加者によって火が放たれ、消防隊が出動する事態となった=2026年10月24日、フランス・マルセイユ
写真=©Denis Thaust/SOPA Images via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ
デモ行進のルート上で、一部の参加者によって火が放たれ、消防隊が出動する事態となった=2026年10月24日、フランス・マルセイユ

発端は、高校生の訴えだった

まず、何が起きたのかを順に見ておきたい。

2026年10月24日の土曜日、フランス各地で、教育への支出拡大と生活費高騰への対策を求めるデモが行われた。フランス内務省の集計で全国41万人、うちパリが11万人。労働総同盟(CGT)はこの倍近い数字を主張しており、主催者と政府の集計には大きな開きがある。

パリの行進はおおむね平穏だった。ただし当局によれば、終了地点の付近で約500人が警察と衝突している。警察は催涙ガスと放水車で対応した。マルセイユでも衝突が起き、リヨンでは市街地から排除するために催涙ガスが使われた。逮捕者は全国で約1000人に上った。動員された警官と憲兵は7万人を超え、前の週末より約2割多い。

41万人が暴動を起こしたわけではない

正確に述べるなら、41万人以上が参加した社会抗議の末尾で、一部集団による暴力と略奪が発生した、ということになる。41万人が暴動を起こしたわけではない。

そして、この運動がどこから始まったかである。

田中道昭『古典で読み解く! 10年後の未来 何が世界を動かしているのか』(朝日新聞出版)
田中道昭『古典で読み解く! 10年後の未来 何が世界を動かしているのか』(朝日新聞出版)

発端は9月半ば、高校生たちが学校を封鎖したことだった。校舎の老朽化、教員の不足、そして大学入学者を選別する制度パルクールシュップへの不満である。そこに大学生、教員、労働組合、労働者、農業従事者、年金生活者、そして「黄色いベスト」運動が加わり、物価と格差を問う全国運動へ広がった。

マクロン大統領は10月23日の金曜日に学生の代表と面会し、教員の増員とパルクールシュップの刷新を約束した。それでも翌日、彼らは街頭に出た。

私は新著『古典で読み解く! 10年後の未来 何が世界を動かしているのか』(朝日新聞出版)の第3章で、民主主義を揺さぶる構造をプラトンとトクヴィルから読み解いた。今回の事態を考えるうえで手がかりになるのは、トクヴィルが晩年に書いた『旧体制と大革命』である。彼がこの本で立てた問いは、豊かな国でなぜ怒りが噴き出すのか、というものだった。