11月3日の米中間選挙を前にした世論調査で、米国人が投票で最も重視するものの1位は物価対策、2位は「民主主義の価値観と規範」だった。これが意味するものは何か。日本工業大学大学院技術経営研究科の田中道昭教授は「暮らしを守ってくれる指導者に、私たちはどこまで任せるべきか。日本の組織も、同じ問いの上にある」という――。
米南部テキサス州で演説するトランプ大統領
写真=ロイター/共同通信社
米南部テキサス州で演説するトランプ大統領(2026年10月27日)

物価高の次に「民主主義」

ロイター通信と調査会社イプソスは9月30日から10月5日にかけて、全米の成人4506人に尋ねた。2026年の連邦議会選挙で投票先を決めるとき、候補者のどの立場を最も重視するか。選べるのは一つだけである。

1位は物価で52%。2位は「民主主義の価値観と規範」で20%だった。移民は10%、犯罪は4%にとどまる。登録有権者に限ると、物価が50%、民主主義が25%となり、民主主義を挙げる人は4人に1人にのぼる。

念のため付け加えると、これは民主主義に賛成する人の割合ではない。数ある争点の中から、自分の一票を決める最大の理由として民主主義を選んだ人の割合である。

物価が首位に立つのは理解しやすい。暮らしの値段は、いつの時代も選挙の最大の関心事だ。目を引くのは2位である。2024年の大統領選挙で大きな争点となった移民と犯罪を合わせても14%。民主主義を最も重視する人は、それを上回った。

民主主義を一つの章にした理由

物価高に続く2位が、民主主義である。この順位には、立ち止まって考えるべき意味がある。

田中道昭『古典で読み解く!10年後の未来 何が世界を動かしているのか』(朝日新聞出版)
田中道昭『古典で読み解く!10年後の未来 何が世界を動かしているのか』(朝日新聞出版)

通常、選挙では、税金をどうするか、移民をどこまで受け入れるか、暮らしをどう良くするかが争われる。民主主義は、そうした意見の違いを調整し、誰に政治を任せるかを決めるための土台である。

ところが、その土台そのものが、選挙で重視する争点になっている。何を決めるかに加えて、どのように決め、権力をどう監視し、間違ったときにどう修正するかが問われているのである。

私は10月20日刊行の新著『古典で読み解く! 10年後の未来――何が世界を動かしているのか』(朝日新聞出版)で、人工知能、戦争、産業、人口・移民・宗教、覇権と並べて、第3章を「民主主義」に充てた。副題は「どんな社会になるのか」である。