中間選挙で民主党が上下両院を制した米国では5日、AI関連株を中心に主要株価指数が急落した。6日の日経平均株価も大幅続落し、約半年ぶりに5万8000円を下回った。ついにAIバブルが崩れ始めたのか。日本工業大学大学院技術経営研究科の田中道昭教授は「AIに巨額投資するほど、AIを動かせなくなるという現象が起きている。これからはAI市場がどこまで大きくなるかではなく、その大きさを何が支えるかに注意すべきだ」という――。
アメリカ国旗と下落する株価チャート
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選挙結果がAI投資にブレーキ

米中間選挙で民主党が上下両院の多数派を奪還した。選挙翌日の11月4日は米国株が幅広く上昇したが、5日は全面安に転じた。終値でナスダック総合株価指数は5.5%、S&P500は4.4%下落した。下げを主導したのは、半導体を中心とするAI関連株である。データセンター規制への懸念が、選挙前からの投資採算や資金調達への不安に重なった。選挙結果は、AI投資を支える条件への警戒を強める材料となったのである。

AIを開発するには、計算能力が必要である。計算能力を増やすには、データセンターが必要になる。しかし、その建設を急ぐほど、地域の反発が強まり、計画が進まなくなるとしたらどうか。

成長を実現するための投資が、成長を難しくする。この逆説を考える手がかりが、『易経』の「大過」にある。

国には成長投資、住民には生活の負担

今回、注目したいのはテキサス州である。

州知事選で勝利した民主党のジーナ・イノホサ氏は、住民を保護する法律が整うまで、データセンターの承認停止を続ける方針を掲げている。その公式政策が重視するのは、地域に施設を受け入れるか、受け入れるならどのような条件にするかという決定に、住民が参加できることである。

これは、技術への好き嫌いだけでは説明できない。

田中道昭『古典で読み解く! 10年後の未来 何が世界を動かしているのか』(朝日新聞出版)
田中道昭『古典で読み解く! 10年後の未来 何が世界を動かしているのか』(朝日新聞出版)

企業から見れば、データセンターは将来の収益を生む設備である。政府から見れば、国際競争で優位に立つための基盤である。ところが、住民から見れば、同じ施設が電力や水を大量に使い、暮らしに影響を与える存在になる。

国が豊かになるという説明だけでは、自分の電気代や水の供給を心配する人々の疑問には答えられない。

ここで起きているのは、同じ投資を見ながら、期待しているものも、負担するものも違うという問題である。選挙は、その違いを政策に反映させる機会となった。地域の不満が、企業の建設計画や投資回収を左右する政治的な力へ変わったのである。