『易経』が描いた、強大さの中にある弱さ
『易経』には、六十四の卦を通じて、変化する状況と、その状況にどう向き合うかを考える視点がある。
ここでは占いとして未来を当てるためではなく、現在の構造を捉えるために読む。
第二十八卦「沢風大過」の卦辞には、「棟橈む」とある。屋根を支える棟木がたわむ姿である。彖伝は、その理由を「本末弱きなり」と説明する。卦の中央に四つの陽が集まる一方、両端は陰である。中央の強い力に対し、それを支える部分が弱いという構図が表されている。
この構図を現代のAI投資に重ねると、見えてくるものがある。
中央に集まるのは、巨額の資本、優秀な人材、高性能の半導体、そして国家の期待である。一方、その力を現実の事業として支えるのは、電力、水、送電設備、建設人材、地域との合意、投資を回収する収益である。
前者の強さは、投資額や技術性能として目に見えやすい。後者の不足は、工事が遅れ、許可が下りず、住民が反対し始めてから意識されやすい。しかし、事業を動かすには、その両方が必要になる。
「もっと資金を集めればよい」「もっと大きな施設をつくればよい」という判断が通用するのは、それを支える条件にも余力があるときである。支えが追いつかない段階で中央の力だけを強めれば、棟木にかかる重さは増す。問題は、力の絶対量だけでなく、力の釣り合いにある。
成長を急ぐほど、建設が進まなくなる
この問題を、民主党による規制強化だけに帰すと、変化の起点を見誤る。
共和党のアボット知事も、選挙前から対応を強めていた。8月3日、送電網への接続を求めるデータセンターについて、監査を終えるまで承認を停止する方針を示し、州公益事業委員会とテキサス電気信頼性協議会(ERCOT)に包括的な検証と監査を指示した。
ERCOTは、最初の審査対象となる計画群の審査を停止した。8月時点で、ERCOTの接続待ちには、大規模な電力需要を伴う計画が1800件以上並んでいた。確認事項は、税制優遇、電力の使用と発電、水の使用と冷却、地域への影響を減らす取り組み、施設の所有者である。
承認停止は、政党が交代して始まったわけではない。選挙で焦点となったのは、停止をいつ、どのような条件で解除するかである。企業は稼働までの時間を読み直し、地域が受け入れられる条件を整えなければならない。

