ファミリーマートが販売した1998円の腕時計が即完売するほどの人気だ。スマホのある時代になぜ売れるのか。消費経済ジャーナリストの渡辺広明さんは「時計単体で勝負していたら売れなかっただろう。ファミマが2021年に始めた施策の成功が腕時計人気も牽引した」という――。

品切れ続きのファミマの2000円腕時計

ファミリーマートが自社のオリジナルアパレルブランド「コンビニエンスウェア」から発売した腕時計(税込1998円)が、発売直後に店頭から2回連続で消える人気ぶりだ。初登場となった4月は約10日でほぼ完売し、9月の再登場時と合わせてこれまで約7万個を販売した。

シチズン時計との共同開発で、10気圧防水、白と黒の2色展開。ファッションデザイナー落合宏理氏がデザインを監修し、文字盤の秒針やベルト穴にファミマカラーがさりげなくあしらわれているのが特徴だ。

Apple Watchのような多機能スマートウォッチやスマートフォンが当たり前になった時代に、なぜ通知もない、歩数も測れないコンビニの2000円の腕時計がここまで売れるのか。

スマホのない時代に8カ月で3万個を売ったローソン

ファミリーマートによると、腕時計は「迷わず手に取れる」「衝動買いできる」価格感度を意識して1998円に設定。受験時に「腕時計が欲しい」といった顧客の声も、開発のきっかけの一つになったという。

実はコンビニで時計を初めて本格的に扱ったのはローソンで、1996年9月だった。先輩バイヤーから商品開発を引き継いだ筆者が、国内時計メーカーのオリエントと組み、当時人気だったダイバーズウォッチを採用した。1500円以上の単価がタブーとされていた時代に、2980円の価格で販売。当時約6000店舗のうちおよそ4000店舗で取り扱い、約8カ月で約3万個を販売したことを今でも覚えている。

当時はポケベルが全盛で、携帯電話やPHSを持っている人はまだ少なく、腕時計は今以上にビジネスパーソンや大学生にとって必須のモノだった。「時間を知ること」そのものが価値だった。男女を問わず、多くの人が日常的に腕時計を必要としていた時代であった。

ポケベルと90年代の携帯電話
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だが今は当時とは店舗数も時代もまったく違う。

今のファミマは国内に約1万6500店舗を展開しており、誰もが時間を確認できるスマホを持っている。