痛ましい事故の背景に「熊との衝突」か
今年も冬ごもりに向けてクマの摂食行動が活発になる時期に入った。
しかし幸いなことに、昨年に比べて人身事故は少ないようである。
それでもクマによる関連死はいくつか起きている。
中でも筆者が注目したのは、8月に北海道根室市郊外で発生した以下の事件である。
「クマと接触か? 車体に動物の毛が…乗用車が中央分離帯に衝突し横転_運転の20~30代くらいの男性死亡_現場付近では頻繁に『ヒグマ』出没〈北海道根室市〉」〔北海道ニュースUHB、8月24日(月)12時22分配信〕
8月24日午前2時50分ころ、根室市湖南の国道44号線で「車両が横転している」との通報があった。乗用車は中央分離帯に衝突して横転したとみられ、運転していた23歳の男性が死亡した。乗用車には動物のものとみられる毛が付着しており、警察はクマなどと接触した可能性があるとみているという。
実際、クマと車や列車などが接触する事故は報告例が多い。ただし死亡事故にまで至るケースは珍しい。
28歳男性はバイクから引きずり下ろされ…
筆者は、明治11年から昭和36年までの83年分の北海道の地元紙を通読し、また市町村史、部落開拓誌、個人自伝などにも目を通して、ヒグマに関する記事をデータベース化し、近著『人喰い熊大国ニッポン』(小学館新書)、『ヒグマ110番』(つり人社)にまとめた。
手元の資料を繰ってみると、昭和34年に今回の現場近くの別海町で、オートバイに乗っていた男性がクマに引きずり降ろされて喰い殺されるという凄惨な事件が起きている。
【熊に襲われ死ぬ】
(前略)別海村字厚別矢臼別十線七十三番地、農業石田照夫さん(二八)は二十五日■■(判読不能)の矢臼別、石田サダさん方に遊びに行き、同夜十時ごろモーターバイクで帰宅の途についたが、二十六日になっても帰らないので、妻の初子さんが午前十時ごろ探しに出たところ、自宅から約二キロ離れた路上にモーターバイクが横転していた。初子さんは部落民の協力で付近を調べた結果、道路から約四十メートル入ったナラ林の中に全身血まみれになり、胸や頭をメッタ打ちされて死んでいる石田さんを発見、根室署西別巡査部長派出所に届出た。傷は全身十数カ所におよび頭、首などの傷がとくにひどく骨がみえるほどで、現場付近やバイクのハンドルにもクマの毛が付着、石田さんの帽子が血に染まってそばにあったことなどから途中でクマに襲われたものとみられている。(『北海道新聞』昭和34年9月27日)

