ドイツ人が記した「熊とバスの事故」

これと似たような事例をドイツ人が記している。

日本に痛ましい例がある。われわれは満員のバスに乗っていて目の前の道路に熊が現われたら、自分たちにも熊にも被害が出ないよう、たいていの者は運転手がブレーキを踏むことを期待する。しかし一九五八年五月、富良野町でまるで正反対の事故が起きた――運転手がスピードを上げたのだ。乗客たちもそれに喝采を送ったという。かわいそうに熊は崖の向こうに跳ね飛ばされ、転落死したのだった。(『熊 人類との「共存」の歴史』ベルント・ブルンナー)

いわゆるオリエンタリズム(東洋蔑視)に基づく不愉快な記事だが、筆者は「一九五八年五月」に起きたという上記事件を、当時の新聞記事から探してみたが見当たらなかった。しかし翌月の記事に以下を見つけた。

【クマが国道で昼寝 阿寒 “さすが北海道”と観光客大喜び】

(前略)釧路発午前七時四十分の阿寒バスが湖畔にほど近い第四発電所付近にさしかかったとき、前方の道路上で昼寝している二歳ぐらいの一頭のクマを発見した。(中略)間もなく運転手がクラクションを鳴らすと驚いてそばの小川に飛びこみ、山中に姿を消したという。

『長年この道路を走っているが、バスの中からクマを見たのははじめて』との運転手のことばに観光客も『このような珍しいチャンスに恵まれて全く幸運(中略)』と大喜びだった。(『北海道新聞』昭和33年6月14日)

大型バスが並ぶ道を横切るグリズリー(アラスカのデナリ国立公園)
写真=iStock.com/RobsonAbbott
※写真はイメージです

スライドドアを開け、車内を物色

このように高みの見物ができればよいが、近年は車に侵入する個体まで現れてしまった。

【「クマに車を荒らされた」座席部分が削り取られ 窓には足跡が…北海道清里町】

10月18日午前8時ごろ、北海道清里町札弦町で、女性が外出のため車を確認したところ、運転席側後部のスライドドアが開いており、座席の一部がクマの爪のようなもので削られていたほか、車窓には幅約16センチのクマの足跡残っていた。車内に食べ物はなかったが、菓子の包装紙などがあったという。車の鍵はかかっておらず、クマが何らかの方法でスライドドアを開けて車内を荒らしたとみられるという。〔STVニュース北海道、10月18日(日)13時00分配信〕