「偉人は最初から偉人だったわけではありません。大切に育てた親がいたんです」と語るのは偉人研究家の真山知幸さん。特に“親の言葉”が偉人たちに大きな影響を与えたといいます。教育評論家の親野智可等さんのコメントとともに紹介します。
「いやなら、いつでもやめればいい。しかし、何事も経験だ」
「いやなら、いつでもやめればいい」は挑戦のハードルを下げる、良い言葉だなと思います。
この言葉を黒澤明にかけたのは、軍人の厳格な父でした。当時の黒澤明は美術学校の受験に失敗した直後。画家になるのが夢だった黒澤は、不合格に大きなショックを受け、人生における大きな挫折を感じていたはずです。そんなタイミングで、たまたま映画会社の求人募集が目に入り応募してみたところ、受かってしまい、映画業界に足を踏み入れることになりました。実は、その会社には応募者が殺到していたものの、黒澤としては、夢である画家の仕事とかけ離れているし、撮影現場でドーランを塗りたくる女優をうす気味悪く感じていたため、入社を決意できずにいたようです。
今考えると、このとき黒澤が映画の道へ進んでいなければ世界の映画業界の大きな損失となっていたわけですが、この決めきれない黒澤の背中を押したのが冒頭の父の言葉でした。
父の言葉に「それもそうか」と思い入社を決めた黒澤は、会社で生涯の師と仰ぐ山本嘉次郎監督に出会い、映画業界で革命を起こしていくことになります。(真山さん)
「いやなら、いつでもやめればいい」「何事も経験だ」などの言葉が、黒澤さんの背中を押しました。そのおかげで映画の道で大成できたわけですから、結果オーライともいえます。ただ、いつも背中を押すのがいいとも限らないのではないか、とも思います。私のおすすめは、「迷っているんだね」と共感的に聞いてあげて、本人がたくさん話せるようにしてあげることです。話しているうちに自分の思考が整理されて、本人自身の決断がしやすくなるからです。つまり、コーチングです。各選択のメリット・デメリットを紙に一緒に書き出すのもおすすめです。(親野さん)
※本稿は、『プレジデントFamily2026夏号』の一部を再編集したものです。



