かんしゃくを起こしやすい子に、親はどう対処したらよいのでしょうか? 感情が暴走するとき、人の前頭前野はほぼ機能していないため、言葉で正論を伝えてもなかなか伝わりません。脳科学的におすすめの方法を紹介します。

体に触れて落ち着かせ言葉で脳に報酬を与える

スーパーなどで欲しいものを買ってもらえず、大声で泣きわめいたり、床に寝転がって暴れたりする子どもを見かけることがあります。しかし、子どもがそのようにかんしゃくを起こすのは、実は自然なことです。子どもの脳は未発達なので、感情や行動を状況に応じてコントロールができないからです。

感情の制御や行動の抑制などを担う脳の部位が、前頭前野です。前頭前野を含む脳の領域は32歳くらいまで発達するともいわれています。子どもに限らず、成人した大人の脳だってまだまだ成長中ということですね。

しかも、この前頭前野の成長スピードは子どもによって異なります。「同じクラスの子はしっかりしてるのに、なんでうちの子だけ……」と思うことがあるかもしれませんが、特に子どもは発達に差が出やすい時期。かんしゃくを起こしやすい子でも通常は年齢とともに改善されていきます。大人がスーパーで寝転がって暴れることはなかなかないと思いますが、年齢とともにおさまってくることがほとんどです。

では、寝転がって暴れる子どもを放っておけばいいのか。そんなわけにはいきませんよね。順を追って、脳科学的におすすめの方法をご紹介します。たとえば、子どもが欲しいお菓子を買ってもらえず暴れているとします。

泣いたり暴れたりしている子どもは、前頭前野が十分に働いておらず、血圧を上昇させるアドレナリンやノルアドレナリンが大量に分泌されて、脳が暴走している状態です。たとえるなら、大火事の状態といえるでしょう。なので、最初にすべきアプローチは燃え上がる【炎を鎮火させる】こと。専門用語で「アタッチメント効果」といいますが、「どうしたの?」と声をかけながら背中や肩など体に触れてあげる行為が大切です。感情が暴走するとき、前頭前野はほぼ機能していないため、言葉で正論を伝えてもなかなか伝わらないからです。まずは、理性ではなく体の感覚にアクセスさせること。脳の広い領域が活性化し、気持ちがやわらぐ効果が期待できます。

子どもの体に触れながら炎が下火になってきたら、「お菓子を買ってほしい」といった子どもの要求を「その気持ちはわかるよ」と、一度そのまま【受容】してあげましょう。自分の気持ちを認められると誰でもうれしいもの。脳の報酬系がはたらき、炎がさらに小さくなっていきます。

それでもまだ落ち着かなかったら、親の目を見てもらうことも大切です。「追視」と呼ばれますが、子どもは周囲の動くものに目が向いてしまうので、【一つのものを見ると落ち着く】効果が期待できます。自宅だったら音楽をかける、部屋を変える、甘い物を食べるなども、脳を切り替え落ち着かせるための効果的な手段の一つです。

子どもが十分に落ち着いてきたら、ここでようやく、親の気持ちを伝えます。「泣いたり暴れたりしちゃダメ」という相手をしばるYouメッセージではなく、「ママは悲しいな」という【Iメッセージで語る】のがポイント。Iメッセージであれば、子どもも反発しづらく受け取りやすくなります。「ママも悲しいんだ」と事実を伝えられると、多くの子どもはどうしたらいいのか自分で考えるようになります。そこで、次に効果的なのが「いつものあなたは、こうじゃないって知ってるよ」と普段の子どものことを肯定することです。これによって、脳は【報酬】(快楽や満足感)を感じ、かんしゃくを起こしていない自分でありたいと思うきっかけになります。

ここまできたら、あとひと息。まだ、必要なのかと思うかもしれませんが、「泣いたり怒ったりしている自分と、にこにこ笑っている自分の、どっちになりたい?」と【比較させる質問】をします。ポイントは子どもに選択権を与えること。かんしゃくを起こしているときは逆に答えることもありますが、落ち着いてからこの質問をされると、ほとんどの子どもは「笑っている自分になりたい」と答えます。大切なのは自分でどうなりたいかを答えさせること。目標や意思を子ども自身に答えさせると、理想の自分をイメージするため、イメージ通りの自分になろうとする行動が増えることがわかっています。これを「コミットメント効果」と言います。

最後に「いつからそうなれるかな?」と聞きましょう。答えは「今から」でも「明日から」でも、いつでも大丈夫です。【子ども自身に約束をさせる】ことで、自ら気をつけようという意識が高まります。そこで「ママも応援するね」と支援する姿勢を見せればバッチリです。大変! と思うかもしれませんが、何度か練習したり、事前にイメージしてリハーサルしたりすると、より実践しやすくなります。