オーストラリアやイギリスなどでは撲滅寸前なのに、日本では毎年多くの人が亡くなっている病気がある。医師の森戸やすみさんは「たった2つの対策を行うだけで、日本でも撲滅できる可能性が高い。ぜひ知っておいてほしい」という――。
病院の廊下
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交通事故と同じくらいの年間死亡者数

世界的には撲滅する日が見えているにもかかわらず、日本では今も毎年約1万人が罹患し、約2700人が亡くなっている病気があるのをご存じでしょうか(※1)。

1年間に1万人というのはすごい数ですね。1日あたりにすると27人です。そして、2700人がどのくらいの数かというと、年間に交通事故で亡くなる方の数が2700〜2900人であることを踏まえると想像しやすいかもしれません。

この病気の正体は、子宮頸がんです。2024年の交通事故死(24時間以内)が2663人、子宮頸がんで亡くなった人が2751人ですから同じくらいです(※1)。

そもそも子宮頸がんとは、子宮の入り口である「子宮頸部」のがんで、若い世代に多く、妊娠・出産という人生の大切な時期と重なることが多い病気です。妊婦健診をきっかけに見つかることも多いので、「マザーキラー」と呼ばれることもあります。

さて、ここでもう一つ質問です。ある国では、若い女性の子宮頸がんが0件になった年があります。それはどこの国でしょうか。

※1 国立がん研究センター「がん情報サービス 子宮頸部」

子宮頸がんの撲滅に効果的な二つの対策

答えは、オーストラリアです。2021年、オーストラリアでは、25歳未満の女性の子宮頸がんの発症が0件になりました。子宮頸がんは、HPV(ヒトパピローマウイルス)が持続感染することで子宮頸部の細胞に異常(異形成)が起こり、数年から数十年かけて発生します。この前がん状態に対する特効薬ができたわけではないのに、がんの発生が激減したのです。

オーストラリアで大きな効果をあげた対策は、二つあります。

一つは、子宮頸がん検診を国のプログラムにしたこと。組織的な検診を行い、異常があれば確実に精査・治療につなげる仕組みにしました。2025年のオーストラリアの子宮頸がん検診参加率は、77.9%(5.5年間に受診した率)です(※2)。

もう一つは、世界で初めてHPVワクチンを定期接種化したこと。世界に先駆けて2007年にHPVワクチンを公費接種とし、しかも学校で接種する仕組みにしたのです。男性への接種開始も早かったため、性交渉によりHPVが広がることも早くから予防できています。2025年のオーストラリアのHPVワクチン接種率は、女性が80.65%、男性が77.66%です(※2、3)。

【図表1】日本とオーストラリアの比較
オーストラリアでは、組織的検診により子宮頸がん罹患率が1990年の10万人あたり20.3人から2002年には9.9人に半減。その後ワクチンも加わり、2021年には25歳未満の発生が0件に(※4)。検診は日本2年毎、豪州5年毎。

※2 AIHW Latest National Cervical Screening Program performance indicator results
※3 2020年1月から2025年6月30日にHPV検査を受けた25〜74歳の割合は77.9%です。
※4 C4 2025 Cervical Cancer Elimination Progress Report