WHOに何度も繰り返し非難された日本
なお、2014年には、WHO(世界保健機構)のGACVS(ワクチン安全性諮問委員会)が、HPVワクチンの安全性を再確認し、「弱い根拠に基づく有害性の主張によって、安全で有効なワクチンが使われなくなること自体が害をもたらす」と警告しました(※10)。これは日本だけでなく、デンマークやアイルランドなどにも向けたメッセージだったのでしょう。
2015年になると、GACVSは日本に対して、かなり踏み込んだ声明を出しました。「日本では、接種後の慢性疼痛などを理由に積極的勧奨が停止されている。日本の専門家委員会自身が症状はワクチンと関連しないと判断しているにもかかわらず、勧奨再開の合意には至っていない。その結果、若い女性が本来予防可能なHPV関連がんの危険にさらされている」というものでした(※10)。そして2017年にも、GACVSが日本に再び言及して「HPVワクチンの積極的勧奨をしていない日本は子宮頸がん死亡率が増加している」と指摘したのです(※10)。
日本の医療従事者は、個別にあるいは集まって、HPVワクチンの必要性と安全性を広めるための活動をし、一刻も早く積極的勧奨を再開するよう国や厚労省に働きかけていましたが、なかなか状況は変わりませんでした。
※10 WHO Safety of HPV vaccines
今から日本も子宮頸がん撲滅を目指せる
2021年になってやっと専門家会議で「HPVワクチンの安全性について特段の懸念が認められない」「有効性が副反応のリスクを明らかに上回る」と判断され、2022年4月から自治体による個別の積極的勧奨が再開されました。つまり、乳幼児の定期接種と同じように、市区町村から対象者に接種を案内することになったのです。
日本では実に8年以上、実質的にHPVワクチン接種が止まっていたので、接種期間を逃した女性にもキャッチアップ接種が行われましたが、それでも定期接種を終えた直近世代の初回接種率は約55%です(※11)。
世界では165カ国が、国の予防接種プログラムにHPVワクチンを導入しています。WHOの最新データをダッシュボードから集計すると、女子のみを対象としている国が78カ国なのに対し、男女とも対象としている国は87カ国。今やHPVワクチンは「女性だけのワクチン」ではなく、男女ともに受けることが世界のスタンダードになりつつあります。
一方、日本では男子の定期接種化はまだ検討中です。ワクチンを受ければ防げた可能性のある子宮頸がんを、今も日本では毎年約1万人が発症しています。がんになる一歩手前の「前がん状態」が見つかり、「いつか子宮頸がんになってしまうのではないか」と不安を抱えながら過ごすことも、つらい治療を受けることも、まして子宮頸がんで命を失うことも、できる限り減らしたいものです。
HPVワクチンの定期接種の案内が届いたら、ぜひ接種を検討してください。そしてワクチンを接種した人も、対象年齢になったら子宮頸がん検診を受けましょう。ワクチンと検診、この二つを組み合わせることで、オーストラリアなどがすでに見据えている「子宮頸がんの撲滅」は、日本でも目指すことのできる未来なのです。
※11 厚生労働省「HPVワクチンの実施状況について」


