成功する同族経営と、失敗する同族経営の違いは何か。日本FBMコンサルティング代表取締役の大井大輔さんは「カリスマ創業者から次世代への交代の瞬間に最大の危機を迎える。この時、経営の論理、所有の権利、家族の感情の3つを明確に切り分けられるかどうかが明暗を分ける」という――。
階段状に積み上げた積み木の最上段で、赤い人型の駒を緑の人型の駒に置き換えている様子
写真=iStock.com/Andrii Yalanskyi
※写真はイメージです

日本企業は「同族経営」が9割

世間では、「同族経営(ファミリービジネス)」に対してネガティブなイメージを持つ人が少なくない。上場企業の泥沼の経営権闘争や、カリスマ創業者の暴走といったニュースが連日のように報じられるためである。

しかし、これは大きな誤解だ。日本企業の9割以上は同族経営であり、世界的に見ても100年以上続く老舗企業や高収益を叩き出す優良企業の多くがファミリービジネスである。

四半期ごとの短期業績や株主の顔色に追われがちな非同族企業と異なり、「10年後、50年後、100年後の未来」を見据えてブレない投資と決断ができること。これこそが同族経営の最大の強みであり、持続的な競争力の源泉に他ならない。

では、なぜ同じ同族経営でありながら、ある企業は事業承継に成功し、別の企業は失敗するのか。日本を代表する2つの事例――「ジャパネットたかた」と「大塚家具」――の辿った暗転と飛躍の軌跡を紐解くことで、同族経営の明暗を分けた構造的な要因を深く解き明かす。

小さなカメラ店から全国区の通販大手へ

同族企業における最大の危機は、創業カリスマから次世代への「社長交代」の瞬間である。この転換期において、組織の力学と人間の感情をいかに統治したか。両社の辿った顛末は、驚くほど対照的な結末を迎えた。

ジャパネット(現・ジャパネットホールディングス)の事業承継は、日本のファミリービジネス史における極めて理想的なモデルケースといえる。

同社は創業者である髙田明氏の圧倒的な個人カリスマ、独創的な商品選定力、そして自らカメラの前に立ち視聴者を魅了するトーク力によって、長崎県佐世保市の小さなカメラ店から全国区の通販大手へと急成長を遂げた。しかし、明氏の存在感があまりに強大であったがゆえに、世間からは「髙田明氏がいなくなったらジャパネットは立ち行かなくなる」と囁かれていた。

社長交代について記者会見するジャパネットたかたの髙田明社長(右)と長男の旭人副社長=2014年7月31日午後、東京都港区
写真=共同通信社
社長交代について記者会見するジャパネットたかたの髙田明社長(右)と長男の旭人副社長=2014年7月31日午後、東京都港区