同族経営を「最強の武器」に変える条件

この構造的リスクを回避し、同族経営の持つ「長期的視点」という強みを最大限に発揮させるためには、客観的な制度設計とガバナンスが不可欠だ。実務の現場において、事業承継を成功させる企業には共通する「4つの条件」が存在する。

条件①:属人性の排除と「事業の仕組み化・磨き上げ」

創業者の「勘と度胸」「卓越した個人の営業力」に頼った経営から脱却し、誰がトップになっても再現性高く利益が出せる仕組みを作ることである。

ジャパネットのように、業務オペレーションを標準化・デジタル化し、「個人で勝つ組織」から「チームによる仕組みで勝つ組織」へ変貌させることが、後継者の負担を減らし、事業を安定成長させる基盤となる。

条件②:所有と経営の分離、および適切な株主管理

自社株が複数の親族に分散すると、将来の意思決定が麻痺する極めて高いリスクを抱えることになる。

経営権を担保するための議決権(最低でも過半数、できれば3分の2以上)を後継者に集中させるスキームを、先代が元気なうちに整備しておくことが絶対条件である。持株会社(ホールディングス)化、種類株式の活用、家族信託の活用、親族外への株式流出を防ぐ定款変更や生前贈与などを計画的に進めなければならない。

選ぶべきは「院政」より「勇退」

条件③:先代の「円満な引き際」と後継者の「守破離」

社長を退いた先代が裏で実権を握り続ける「院政」は、後継者の求心力を著しく低下させ、組織内に「二人の王」を作ることになる。

先代の最も重要で難しい仕事は、しかるべきタイミングで「潔く決定権を譲る」ことである。一方、後継者は先代が築いた歴史や理念に敬意を払い(守)、時代に合わせて手法を変革し(破)、自社独自の新たな強みを確立する(離)という「守破離」のアプローチを意識する必要がある。

【図表2】ジャパネットと大塚家具の違い
筆者作成

これまで挙げた条件を支え、世代を超えて同族経営を繁栄させるための根幹となるのが、

条件④「ファミリーガバナンス(ファミリー憲章)の構築と対話のプロセス」

である。