今年、アメリカはベネズエラ、イランを攻撃した。かつて「世界の警察官」と呼ばれた超大国に、何が起きているのか。アメリカ政治・経済が専門の丸紅経済研究所・今村卓社長は「アメリカ国民の本音を知る必要がある。それがわかれば、次の大統領選の行方も見えてくる」という――。

※本稿は、ポッドキャストで公開中の「THE INSIGHT」#01「イラン戦争から読み解く、世界の地殻変動」の一部を書き起こし、再編集したものです。

第二次世界大戦の勝者の悩み

――冷戦後は、グローバリゼーションが広がり大国を中心として国際法を守り、リベラルな国際秩序の上に繁栄を築く時代になると考えられていました。今、急速にこうした秩序が解体されている、といった論調があります。

米外交問題評議会(CFR)が発行する国際政治経済ジャーナル「Foreign Affairs」にも、やはり「米大統領がもたらした無秩序」といった論考が出ていました。現代が世界秩序の激変期であるといった指摘を聞く機会も多いですが、今村さんはどうご覧になっていますか?

【今村】そもそも、なぜ「ルールに基づく国際秩序」といったものがこれまで続いてきたかを解説します。

この始まりはやはり第二次世界大戦に対するアメリカの反省なんですね。あの当時、日本と戦い、それから大西洋を挟んでドイツと戦いました。日本やドイツから見れば、アメリカは圧倒的な勝利を収めた第二次大戦の戦勝国です。けれども、アメリカから見れば、その間にやっぱり経済も非常に疲弊しましたし、アメリカも実際に戦死者も含めて膨大なコストを払っているんですね。

硫黄島の星条旗
硫黄島の星条旗(写真=Joe Rosenthal/PD US not renewed/Wikimedia Commons)

そして迎えたアメリカの黄金期

二度とこんな戦争を起こさないためには、アメリカがリードをして大西洋も太平洋もしっかり押さえないと、アメリカの安定に繋がらないと。戦争が終わった後、アメリカ主導で世界を安定させることがアメリカのためになるという、強い認識が生まれました。そのあと冷戦がすぐに始まったわけで、ソ連に対抗するという意味でもそれはちょうど良かったんですね。

その認識は冷戦までもつわけです。結局ソ連が、ある意味自滅する形ですけれども、やはり共産主義なんて立ち行かないということで崩れていきました。アメリカが完全勝利を収めた形になるんですが、その一方で、冷戦の最中から、まずは日本、それからヨーロッパで経済が復活してくるんですよね。

アメリカの一番の黄金期というのは1950年代から60年代です。この頃は日本ですらまだ途上国から少し這い上がったぐらい、それからヨーロッパもようやく復興してきたぐらいで、世界で本格的に製造業を担える国がアメリカぐらいだったのです。