「世界の警察官」が招いた生活苦
ところが、だんだん復興してくれば世界中に製造業を担う国が出てきます。日本、ヨーロッパの先にはASEANや中国が出てくるわけです。競争相手が増えてくるんですね。
そうすると、同じ製造業であっても、アメリカよりも強いところも当然出てきます。最初が日本だったわけで、やっぱり雇用を失う人たちがアメリカ国内で出てきました。
この人たちから見れば、アメリカは世界に軍事力を使っていろんな安定をもたらしているんだけれども、我々の何の得になっているのかと思うわけです。
当初はアメリカの国内でも少ない割合の意見だったんですが、だんだんこうした人たちが増えていくんですね。しかも中国のように、世界を圧倒するような製造業の力を持つ国が出てきてしまった。従来ならば世界と競争しなくて済んだアメリカの産業は、中国との競争に晒されて次々と負けていくんですよね。
そうしたところで、アメリカの国内で競争の敗者がいっぱい増えてしまった。「世界の安定のためにアメリカの軍事力を使うことが、我々のためになってない」そうした声を聞き取ったのがトランプ氏です。
トランプ氏が嗅ぎ取った国民の「本音」
私がワシントンに駐在していた9年半のうちの8年間がオバマ政権なんですけども、この間というのはある意味オバマ氏はそうした世界秩序が大事だ、国際秩序が大事だとか、こうしたことを守るのが大事だというふうに強く言っていたんです。
けれど、裏側で「雇用の悪化が生じている」とか「中国に良いようにしてやられている」という本音の声が相当色んな地域から噴き出し始めていました。オバマ氏は2期8年務め上げましたけれども、その後の大統領選挙で同じ民主党のヒラリー・クリントン氏はトランプ氏に負けるわけです。
トランプ氏は国民の本音の部分を嗅ぎ取った。実はものすごく目の付けどころが良い人です。その声を拾い上げて一種の力にしたわけです。それから先、じゃあどう政権を組み立てますかというと、いまさら国際秩序は……という話になるんですね。
トランプ政権は、まずはわかりやすい貿易赤字に注目しました。そこから先は「我々に関係ないような国にわざわざ米軍基地を置く必要はない」といった、コストを自国のために最優先にするというところに切り替えていく方向になるわけなんですね。
まだ政権1期目の時には、トランプ氏自身も安全保障や外交はよく知らなかったですから、そこまで大胆な転換は進まなかった。

