中国がおかんむりの「シンシー」の描き方
中国が日本のテレビドラマに怒り心頭だ。
矛先が向いたのは、TBS系の日曜劇場『VIVANT』。中国共産党系の新聞「環球時報」は10月26日、ネット上の声を引用する形で、作品が「中国を中傷し、『中国脅威論』を誇張している」と指弾したと報じられた。
前日25日には、国営の中国中央テレビ(CCTV)も公式SNSに論評を載せた。“旧日本軍の拷問”を中国人になすりつけ、意図的に対立を生み、敵意をあおっていると非難したという。
国営メディアは、日本による「認知戦」の一部とまで位置づけた。中国版SNS「微博(ウェイボー)」では、報道が話題ランキングの1位に上ったそうだ。
日本ではいまや『VIVANT』と「別班」(存在が確認されていない自衛隊の秘密情報部隊)を知らないほうが少数派だろう。第1シーズン(2023年)は、最終回の世帯視聴率が19.6%に達した。今年7月に始まった第2シーズンは初回18.8%。朝ドラや大河ドラマを含め、今年放送されたドラマで最高の数字と報じられた。配信でも、8月にアジアで最も視聴されたストリーミング作品になったという人気ドラマだ。
北京が問題にしたのは、第2シーズンで敵役となった秘密組織「シンシー(Xinxi)」の描き方。
劇中のシンシーは、表向きは多国籍の民間情報機関だが、実態は「中国の別班」とされる。率いるのは樊林杏(ハン・リンシン)という女性。元中国公安部の第6局長で、父の失脚を機に公安部を離れ、人脈と能力を活かして組織を束ねている。劇中では北京語が飛び交う。
シンシーは、自衛隊の秘密部隊「別班」のメンバーを拘束し、磔にして拷問にかける。指を切り落とし、腹や胸を刃物で刺す。批判する側は、こうした手口が旧日本軍の拷問と酷似していると反発しているわけだ。
高市首相を持ち出して批判
ここで重要な点は、劇中に「バルカ共和国」など架空の国が登場すること。シンシーの拠点も、架空の「ゴルバド共和国」に置かれている。にもかかわらず、シンシーの素性だけは「中国」という実在の国名で示された。
国営メディアは、高市早苗首相まで持ち出した。高市首相は10月14日の衆院予算委員会で、質問の流れから、録画した「VIVANT」を年末年始にまとめて観たいと答えた。CCTVなどはこの一言をとらえ、「高市早苗が名指しで観たがる作品」と呼んだ。
日本のネット上には「国策迎合ドラマ」という言葉まで飛びだした。中国メディアは、「高市応援劇」と呼ぶ日本の声もあると伝えている。
あのTBSなのに、だ。

