日本人の高齢者は20年で約5歳若返った
仕事の辞めどきは、会社が決めるものではなくなりました。
私はファイナンシャルプランナーとして、1990年代からリタイアメントプランと老後資産形成に関わっています。30年前、「60歳以降もフルパワーで働き続ける」という発想は、本人にも会社にもありませんでした。「もう年寄りだから」と、60歳で一線を退くのが当たり前だったのです。
ところが今の60代は、「給料さえ出るなら、まだ働いても構わない」という人がむしろ多数派になっています。
このような変化が起こった理由の一つは、日本のシニアの若返りです。内閣府が2021年に実施した調査によると、自分のことを「高齢者だ」と感じている人の割合は、60〜64歳で2割を切ります。65〜69歳で30%台前半、70〜74歳でようやく約5割です。
今の60代・70代が元気で活力があることを示すデータはほかにもあります。たとえば、スポーツ庁の調査によると、70歳代前半男子の新体力テストのスコア(23年)は、05年の60歳代後半のスコアとほぼ同じレベルでした。20年前と比べて、体力は約5歳分若返った計算です。
60代になってもまだ活躍できるとすれば、辞めどきを検討するうえでの論点は「会社がシニア社員をどう処遇するか」に移ります。
パーソル総合研究所と中央大学の調査では、35年に384万人分の労働力が不足すると推計されています。人材の奪い合いは激しくなる一方でしょう。そうなると、若手を採ることは年々高くつきます。初任給を上げなければ新卒は集まらず、採用できてもゼロから育てる研修コストがかかる。しかも、ようやく戦力になった頃に、より良い条件の会社に転職していきます。
すでに自社で働いているシニアは、その反対です。選考も研修も要らず、今日から仕事ができる。現役に劣らぬ能力と働く意欲を持っているうえに、長年勤めた会社に愛着があり、簡単には辞めません。組織に世代交代は必要ですから新卒採用を否定するつもりはありませんが、これだけ条件の揃った人材を活用しない手はないはずです。
ところが、これまで多くの会社はこの逆を実行してきました。即戦力になる人材を、嘱託社員として大きく減給し、単純業務に就かせる。人事戦略としてこれほどおかしな話はありません。
割増退職金がもらえても早期退職は割に合わない
経営者の方と話していると、「うちのベテランはやる気がない」という愚痴をよく聞きます。しかし多くの場合、彼らのやる気を削いだのは会社です。年齢のみを理由に給料を減らされれば、モチベーションは低下します。
ここから先は有料会員限定です。
登録すると今すぐ全文と関連記事が読めます。
- 広告最小化で快適な閲覧
- 雑誌『プレジデント』が最新号から読み放題
- ビジネスに役立つ学びの動画が見放題
- 会員限定オンラインイベント




